前の投稿では、フッ素樹脂のようなノンスティック加工されていないステンレスフライパンでも油なしで目玉焼きを作る方法を紹介しました。ポイントは250~300℃の予熱と、フライパンの外側の底を冷却することでしたが、その理由を考えてみました。

目玉焼きがくっつく理由: 100℃以下でタンパク質の固化と水の蒸発でくっつく

ネット調べてみました。目玉焼きでフライパンと接するのは白身で、ほとんどタンパク質と水から出来ていて、油は含まれていません。くっつきやすいのは、タンパク質が加熱されて固まる時に水も一緒に蒸発して、フライパン表面にぴったりと密着固化するようです。つまり、タンパク質が固まる化学反応と水の蒸発がセットになってくっつくようです。

フッ素樹脂加工や油が引いてあると、これらは水をはじきますので、タンパク質が固まっても水の蒸発による密着作用が小さくなりくっつきにくいと考えると納得が行きます。ステンレス表面はあまり水をはじかないのでくっつきやすいのもわかります。このくっつきは100℃以下で起こり、焦げ付きとは別物と考えてください。焦げ付きは、200℃位以上で長時間加熱されると、炭化して黒くなってくっついてしまうことです。ただ、100℃以下でくっついて、さらに温度が上がって200℃で炭化して、両方の効果でひどい焦げ付きになることはあると思います。

250~300℃に予熱するとくっつかない理由(1):吸着水の除去

 まず、250℃以上の予熱で、目玉焼きがくっつきにくくなる理由を考えたいと思います。まずは、フライパンに吸着している水が蒸発してしまうことです。フッ素樹脂コート以外のフライパンの表面には水が目に見えない状態で、うすい層になって吸着しています。これは100℃で蒸発する液体の水とはちょっと違って、表面に強く張り付いている水ですので、250℃以上になってやっとほぼ蒸発します。先に述べましたが、目玉焼きがくっつくのは水の蒸発が関係していますので、これを予熱で先に取り除いておくとくっつきにくくなるのは良く分かります。

250~300℃に予熱するとくっつかない理由(2):空中浮揚(ライデンフロスト効果)

予熱の具合を調べる時に、少量の水を垂らして玉になって転がると適温と言われています。これがライデンフロスト効果といわれる現象で、ネットで調べると150℃位から始まり、300℃で最強になり、それ以上になると弱くなるそうです。

つまり、温度の違うフライパン上に同じ量の水を注いだ時、この水が蒸発してなくなるまでの時間は、150℃が最短で、300℃が最長になり、それ以上だとまた徐々に短くなるということです。300℃が150℃よりも乾燥に時間がかかるという常識と逆になる現象です。これは水滴が加熱されて蒸発するときにジェット噴射のようになり、水滴が空中に浮揚して転げまわる現象です。浮揚すると、熱が伝わりにくくなるため蒸発には多く時間がかかります。空中浮遊は重力と熱によるジェット噴射量の駆け引きになり、300℃が最も長時間滞在可能になるようです。

これを目玉焼きに当てはめると、白身には多量の水分が含まれていますから、300℃程度に予熱されたステンレスフライパン上では、ライデンフロスト効果が生じて浮き上がろうとする力が働くはずです。実際のところは、卵によってフライパンの温度は下がり、またタンパク質が加熱によって固まりますから空中浮揚までには至らないと思いますが、少なくともくっつき防止には役に立っていると考えられます。
 白身が固まってしまったら、もうくっつくことはありませんので、火を弱めます。いつまでも250℃以上にしておくと、今度は炭化による焦げ付きが起こってしまい、これはくっつくどころか食べられなくなってしまいます。

フライパンの外底を冷却すると目玉焼きがはがれる理由:熱膨張収縮

 ステンレスフライパンを使って、油を引かずに目玉焼きを作るポイントは、予熱と冷却と紹介しましたが、次は冷却するとうまくはがれる理由について説明します。実は、これの理由は簡単で、ゆで卵の殻は水で冷やすとうまくはがれるのと同じ理由と思います。つまり、白身と殻、白身とステンレスの間の熱膨張収縮に差があるためと考えます。ステンレスは白身よりも冷えやすいので、先に収縮して白身からはがれてしまうと考えています。

予熱と冷却さえすれば、ステンレスでないフライパンでも油なしで目玉焼きを作ることができます。

 ステンレスフライパンで、目玉焼きを油を引かないで作るポイントは、250~300℃の普段より高めの予熱と、取り出す時のフライパン外側底の冷却であることを紹介しました。でも、これならステンレスでなくても良いのではと思われると思います。

 正解は、まさにその通りで、鉄もアルミニウムもセラミックスどのフライパンも、この予熱、冷却ルールを守れば油なしで、くっつくことなしに目玉焼きを作ることができます。

 例として、アルミニウム(合金)フライパンを使ったときの写真を載せました。目玉焼きの作り方はステンレスの時と同じ要領です。ガスコンロの高温モードで自動的に弱火になったら(290℃)卵を割りいれ、少量の水を加えて蓋をして弱火にして半熟位で火を消します。フライパンを濡れた布巾に乗せてジュッと冷却して、へらで取り出します。フライパンの写真は、調理前後ですが、目玉焼きの周囲が少しくっついていますが、取り出しに苦労するほどではなく、ほとんどステンレスと同じ結果でした。目玉焼きの写真でも、こわれることなく、焦げ目が出来ています。つまり、アルミフライパンでもステンレスフライパンでも同じ結果になりました。他にも、セラミックスフライパンでもやってみましたが、予熱と冷却を守れば、油なしで目玉焼きが出来ました。

しかし、アルミフライパンにはちょっと困ったところが

 フッ素樹脂コーティングフライパンは、樹脂が260℃以上で分解してしまうため、これ以上の高温調理に適さないのは皆さんよくご存じの通りです。 これに比べて、アルミフライパン(正確にはアルミニウム合金製で純アルミニウムよりも丈夫)は、300℃に加熱しても大丈夫で、この温度に予熱しておけばかなり食材がくっつかなくなるので非常に良いと思われます。さらに、良いことには、熱の伝わりが速いため火加減調整がやりやすく、さらに軽量という調理にとって素晴らしい素材です。特にイタリアンのようなソースに絡めたり、ソテーにはばっちりです。

 しかしですが、アルミニウムには、汚れやすく、腐食しやすい欠点があります。目玉焼きのくっつきは予熱と冷却で回避できましたが、卵でない、たとえば水道水でお湯を沸かしただけでもフライパン表面が真っ黒になってしまいます。一方で食洗器で洗うと今度は腐食して白さびが出ます。なかなかやっかいです。

 写真に、先ほどのフライパンを水で洗ったのち、お湯を沸かした後の様子を示しました。水道水中の鉄とカルシウム分がアルミニウムと化学反応して黒くなると取扱説明書に書かれています。これは全くの無害ですが見た目が良くないです。水と化学反応するくらいですから、準備と手入れが大変で、米のとぎ汁を煮たりとか、油回しをしてから洗剤で洗ってはいけないとか、汚れてしまっても酸やアルカリの洗剤は使ってはいけないとか、磨きなおしてきれいにしても結局振出しに戻るだけという、相当難しい手入れが必要なようです。この道具を使いこなすのは、まさにプロの調理人と思います。フライパンメーカーさんもプロユースを意識されていると思います。お鍋ではアルマイト加工して化学反応性を小さくすることができるのですが、これは200℃でアルマイトがこわれてしまうのでフライパンには適しません。アルミフライパンがそれほど一般的でないのはこのためだと思います。

 

鉄フライパンは油がないとすぐにさびてしまう。

 また、鉄のフライパンもプロ向けの非常に優れた道具です。しかし、これの欠点はさびやすいことです。だから、油を塗っておくことが大前提になります。したがって、油なし調理ができるかどうかに鉄フライパンを用いるには意味がなく、できたところで、フライパンがさびていては全く困ってしまいます。

セラミックスフライパンは急冷に弱点

 最近人気のセラミックスフライパンですが、セラミックスも予熱と冷却をしっかり行えば、ステンレスと同じように目玉焼きは油なしでもくっつきにくくなります。しかも、アルミや鉄のように腐食することもありませんので、調理器具としては大変優れていると思われます。しかし、セラミックスフライパンの取扱説明書の注意事項にも書かれていますが、高温に加熱してからの急冷却は、亀裂が入る恐れがあり、推奨されていません。正直に申し上げますが、本ブログでは、目玉焼きを取り出す時にフライパンの外側の底を濡れふきんで冷やすことをお勧めしています。つまり、熱膨張収縮の差で目玉焼きをはがしやすくするという意図なのですが、これをセラミックスフライパンでやると、フライパンの基材金属(おそらくアルミ)とセラミックスコーティングの間の熱膨張収縮差で目玉焼きがでなく、コーティングはがれてしまうのではないかと恐れています。ですので、セラミックスフライパンでは、怖いので急冷はお勧めしません。一般的にセラミックスは固いですが脆いため、急冷は苦手です。しかし、ステンレスは、急冷しても大丈夫です。

油なしで300℃高温目玉焼きを作るにはステンレスフライパンがベスト。

ステンレスは丈夫で長持ち、見た目も良い。
しかし、重いのと熱が伝わりにくいのが欠点

 どうやら、300℃高温で目玉焼きを作るにはステンレスフライパンがベストのようです。300℃で油なしの意味はと問われると、少なくとも食感が違ってくると言えると思います。油なしだけならフッ素加工フライパンでできます。300℃、油ありなら鉄フライパンでできます。セラミックスやアルミ合金でもできますが、それぞれ壊れたり、手入れが大変になる恐れがあります。

 ステンレスの特徴は、何といっても化学反応性が小さいため、さびにくい、汚れにくいため見た目が良いという特徴があります。さらに頑丈なため、高温加熱や、急冷も平気です。しかし、反面、重いというどうにもならない欠点があります。軽くした薄いステンレスだとすぐに変形してしまいます。また、熱が伝わりにくいため、スピードが必要な料理にも向きません。

 欠点克服のため、アルミニウムを間に挟んだ層構造のステンレスフライパンだと、重さと熱伝導に若干の改善がありますが、軽さはアルミフライパンやアルミフライパンにコーティングしたものには及びません。目的に合わせてフライパンを選ぶというのがどうやら正解のようです。

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