この方法では、まず平面に描画とコーティング作業を行えます。成型後の曲面への作業に比べると、はるかに楽になります。

こんにちは。当ブログ『EMMARINI』では、廃棄処理時の環境負荷が大きいフッ素樹脂の使用を削減するために、調理器具向けの親水性透明セラミックコーティングを紹介しています。このセラミックコーティングはアルミとの密着性が高く、厚さが1μにも満たない極薄仕様のため、曲げても剥がれない特長があります。今回は、この密着性を活かし、先にコーティングを施した後、アルミ板を叩いて伸ばす鍛金成形を行いました。常識的にはセラミックを伸ばすことは不可能とされていますが、工夫次第で成功させることができました。

EMMARINIのセラミックコーティング詳細についてはページ上部のメニューボタンから検索できます。

実際に、先に描画セラミックコーティングをしてから叩いてお皿を作ってみます。

1.アルミ板の用意

アルミ板はネットショップやホームセンターで入手可能です。フライパンなどの高温で使用する場合は、焼きなましをしても硬めの5000番台の合金、お皿の場合は焼きなますと柔らかい1000番台の純アルミが適しています。厚さは0.5~2mm程度が適当でしょう。どちらもあらかじめバーナーで焼きなましし、できるだけ柔らかくしておきます。鏡のような金属光沢を再現したい場合は、ピカールで磨いて仕上げます。

2.ステンシルシートを使って下絵を描きます。成型前の平面だからこそ描画が楽にできます。

矢絣模様のステンシルシートを用意しました。これ以外にも多くのデザインがあります。
ステンシルシートをぴったり貼り付けた後、ラッカーをスプレーします。曲面には貼り付けることができませんが、平面なら問題ありません。このようにして、ステンシル法によるマスキングを行います
ステンシルシートを剥がして、さらにEMMARIのロゴを油性マーカで書き入れました。
糊残りがある場合は、洗い流した後にEMMARIの透明セラミックコーティングを塗布します。液を塗り、ティッシュペーパーで均一に伸ばして拭き取る作業を3回繰り返します。薄く塗り重ねていくことが重要です。一度に厚く塗ろうとすると、後で白くなり失敗してしまいます。塗布後はヘアドライヤーで乾燥させてください。次に、ラッカーや油性マーカーをラッカー薄め液で除去します。セラミックコーティング液はラッカー薄め液では除去されません。この方法でステンシルでのマスキングができます。最後に、ガスコンロやオーブンなどで250℃程度で5~10分加熱し、セラミックコーティングを焼き付けます。焼き付け後は、クエン酸と中性洗剤で不純物を取り除いて仕上げます
アルミ板を沸騰した水道水に浸漬すると、マスキングされてセラミックコーティングされていない部分が黒化反応を起こし、黒くなります。この黒色はラッカーの黒インクによるものではなく、水道水中のミネラル分(カルシウムや鉄)による発色であり、無害です。重曹をひとつまみ加えると、さらに黒くなります。黒さの程度は水道水の水質にもよりますが、1時間ほど煮込むことでしっかりと色が定着します。」
黒染めが完了したら、再度セラミックコーティング液を塗布します。これにより、黒染めされた部分も保護されます。元々コーティングされていた部分は二重になりますが、問題ありません。
コーティング液は再度250℃で焼き付けます。これで描画とプレセラミックコーティングは完了です。

3.アルミ板を叩いて成形します(鍛工工程)

プレセラミックコーティングしたアルミ板を丸く切り抜きます。
鍛工の道具です。塩ビ製配管道具の凸型キャップや凹型インクリーザーがあると便利です。ハンマーは木槌を使います。
根気よく叩いてお皿の形に伸していきます。ぼこぼこの状態ですが、コーティングも描画も見た目でははがれていません。
成形が終わると仕上げにもう一度セラミックコーティングを前二回と同様に処理しておくと確実に保護されます。写真では景色が反射しているのが見えるので、光沢が失われていないことがわかります。
反対側もセラミックコーティング処理します。両面塗布した後は250℃で焼き付けます・

以上で完成です。本来、描画された黒色層や透明なセラミックコーティング層は極薄であるため、曲げることはできても、鍛造によって伸ばすことは難しいはずです。見た目では剥がれていなくても、微細な亀裂が部分的に生じている可能性があります。そのため、成形後にもう一度コーティングを施すのが適切と考えられます。

この方法によって他にもいろいろな形やデザインのお皿をつくることができます。

お皿の模様のバックが黒の場合です。もちろん叩いて成形出来ます。
サイズ感はこのようなイメージです。転がりやすいものを収納するのに便利です。直火加熱やオーブン、食洗機(食洗機用の中性洗剤推奨)にも対応しています。ただし、電子レンジでの使用はできません。
「曲げ成形と鍛金成形を組み合わせることで、より多様な形状を作り出すことができます。
漬物を盛り付けて冷蔵庫に入れると冷えるのが早いです。アルミの熱伝導率が大きいためです。
逆に冷凍のさしみを乗せてしばらく放置すると。
解凍が早い。これも熱伝導のおかげです。

これまでになかったアルミ製のお皿を手作りしてみませんか?特許を取得し、新規性と進歩性が認められました。戦時中や昭和の給食時代に使われていた1円玉イメージのアルミのお皿とはまったく異なります。プラスチックのように環境負荷が大きくなく、セラミックのように重さを気にする必要もありません。熱伝導の良さはメリットともデメリットとも言えますが、食物の温度を感じやすくなるという特徴があります。