アルミホイルなどからできたアルミ玉の用途についての紹介記事です。

アルミホイルを叩いてピカピカのアルミ玉作成がSNSなどで人気ですね。当ブログEMMARINIでも、過去ブログの記事で、アルミ玉を黒染め装飾してから透明なセラミックコーティングで保護する方法について紹介しました。アルミ玉は確かに装飾品や根気からの精神的修行にはなるのですが、実用的な用途があれば尚よいと思います。そこで、アルミの安全性、耐熱性や熱伝導性を活かして飲み物に直接入れて保冷や保温ができないか検討してみました。

1.まず、比熱について調べます。1kgの素材温度を1℃(1K)あげるのに必要なエネルギーです。比熱が大きいほど、多くの熱を奪ったり(保冷)、熱を放ったり(保温)することができます。

素材比熱(kJ/kg・K)
4.2
2.1
アルミニウム0.9
ステンレス0.5
石灰岩0.9
比較参考:氷の融解熱 333 kJ/kg      水の蒸発熱 2260 kJ/kg 

2.この表からわかること

1)水を冷やすのにアルミは氷には到底およばないが、保冷限定なら飲み物が薄まらないメリットがある。ビールの保冷程度には使えるかも。

水の比熱はアルミの約4倍、氷は約2倍もあります。例えば、水の温度を1度下げるのにアルミは同じ温度の氷の2倍の重量が必要になります。しかも氷には溶けるときに融解熱というより大きなエネルギーを水から奪うことができますので、冷やすことを考えればアルミは全く氷には太刀打ちできません。しかし、氷は解けると水になるので飲み物が薄くなります。このことから、冷凍したアルミ玉を冷えたビールに入れると、ビールを薄めずに保冷できるという、ちょっとだけ嬉しい用途がありそうです。

 アルミ玉をー18℃に冷凍して、冷えていないビール(例えば18℃)をアルミ玉で冷やして適温にする冷却は現実的に無理です。 単純計算でも、ビールを0℃にするには少なくともビールの4倍の重さのアルミ玉が必要です。そんな重いアルミ玉をビールジョッキに入れるわけにはいきません。しかし、350cc5℃のビールを4℃にするのならばー18℃のアルミ玉74gで間に合います。後述の市販アルミ玉(直径約3cm)は約40gですので2個あれば1度温度を下げることができるので、少々の時間なら保冷に役立つかもしれません。あくまでも気持ち冷たいかなという程度ですが、ビールが薄くならないのが魅力です。

2)アルミ玉を保温に利用する場合は、アルミ玉を予めかなり高温にしておけば温度差を大きくすることができるので効率的に利用できます。

表に石灰石の数値を入れたのは、焼いた石をシチューに入れて熱くして料理するという話をどこかで聞いたことがあるからです。焼石を水に入れたら石が熱衝撃で砕けてしまうのではないかと心配ではありますが、アルミなら砕けません。比熱はアルミの方がステンレスよりも大きく、石灰石と同程度です。しかもアルミは、家庭にあるガスコンロや電気ヒーターなどで250℃程度なら素早くあたたためることができます。

250℃のアルミ1kgで20℃の水1kgをどれだけ温められるか方程式を作ってみましょう(比熱の温度依存性は無視します)。

(250-T)x 0.9 = (T-20)x4.2 ですので

T=60.6℃になります。 同じ重量なら40度も温まりますので、保温目的なら結構使えそうです。先ほどの40gのアルミ玉2個を250℃にしておくと、60℃のお湯350gならば69℃にできる計算になります。保冷の1度と異なり約10度との差は実感できる効果と思います。

3.アルミ以外の素材では?

ステンレスは比熱がアルミより小さいので、保冷、保温効果はもっと小さくなります。また、アルマイトやメッキは保冷用には使用できますが、保温用には加熱すると表面がひび割れてしまい使用は困難です。セラミックス(石、ガラス)も保温用には加熱や冷却時破裂する恐れがあります。樹脂も加熱保温用にはそもそも使えません。このことから保冷と保温の両方にはアルマイト処理されていないアルミ無垢材が最適と考えられます。

ところで、フライパンで、ステンレス製はアルミよりも温まりにくく冷めにくいため、炒め物ではなく煮込みに適しているとよく言われます。比熱で考えると、アルミはステンレスの2倍もあるので、一見これはおかしいのではないかと思われます。実はこれは重量のせいで、同じ容積の場合、ステンレスはアルミの3倍も重量があるので、比熱に重量を掛けた全体の熱容量は逆転してステンレスのほうが大きくなります。つまり、ステンレスフライパンは重いからこそ熱を多くためることができるということです。さらに、ステンレスは熱の伝わりやすさがアルミの10分の1程度しかありませんので、余計に温まりにくく冷めにくいわけです。ステンレスフライパンの欠点は重い、熱ムラができるとされていますが、これだから熱持ちが良いわけです。

4.アルミの欠点は?

無垢のアルミの欠点は耐食性と汚れやすさです。食品の塩分により腐食しますし、お湯と接触すると黒くなってきます。本ブログEMMARINIでは、薄くて透明なセラミックコーティングでアルミ表面を保護しているため、腐食や汚れの問題がありません。また、コーティングが1ミクロン以下で極めて薄いため急熱急冷してもはがれません。この技術は特許を取得しており、有償で開放中です。

5.アルミ玉を使って、保冷保温について検証しました。

1)保冷実験

ステンレス保温マグカップに350ml缶ビールと同量の水を入れます。初期温度は4.7℃です。

冷凍庫でー18℃にした40gのアルミ玉4個を入れました。約2分後に最低温度の2.7℃になりました。2度温度が下がりました。(このアルミ玉は市販品です)

         

さらに約10分後に元の温度の4.8℃になりました。ちなみにこの時の気温は30℃でした。真夏でビールの冷たさを12分間余分に稼げればまあまあかなと思われました。もちろん、どれだけ保冷時間を稼げるかは、外気温と容器の影響がありますので、計算通りになるとは限りません。

2)保温実験

ステンレス保温マグカップに水200mlを入れます。あらかじめ約60℃の冷め気味にしておきました。
250℃に熱したアルミ玉を1個入れました。温度は約64℃になりました。4度の上昇です。
アルミ玉4個入れると約74℃になりました。14℃の上昇です。これだと冷めたお茶も暖かい飲みごろになります。このように実験では保温に加えて温め効果も確認できました。

6.まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました。人気のアルミ玉制作ですが、ピカピカの装飾用だけでなく、さらに黒染めで描画し、保冷保温ができる技術を紹介しました。EMMARINIでは他にもアルミ、ステンレス、鉄フライパンについての新しい技術も紹介していますので、右上のメニューボタンからホームページも見ていただければ幸いです。また透明セラミックコーティング液はブログショップで受注販売しています。

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