当ブログエマリーニでは、自作の透明なセラミックスをフライパンなどの調理器具にコーティングする脱フッ素樹脂コーティング技術について紹介しています。フッ素樹脂は廃棄処分での環境負荷が大きくSDGsにふさわしいと言えません。当ブログでは環境負荷の小さい透明なセラミックコーティングに注目しています。
前回のブログでは、透明なジルコニアコーティングをステンレスフライパンに処理すると、予熱さえ十分に行えば食材はくっつかず、しかもお手入れが厄介な油焦げが落ちやすくなることを紹介しました。ジルコニアとはセラミックスの一種で、人工歯の材料となる安全かつ丈夫で汚れにくい素材です。過去記事はこちらです。
【フライパン】透明ジルコニアコーティングで油焦げこびりつき問題が解決できました。
今回は、このコーティングがご飯粒に対して、予熱なしでどのようになるかを調べてみました。今日では、電気炊飯器の内釜のほとんどがフッ素樹脂加工品です。ダイヤモンド、プラチナ、土鍋等いろいろな素材が登場していますが、結局表面にはフッ素樹脂が使われているようです。こうしないとご飯粒がくっつきやすいのでしょうね。
透明なジルコニアコーティング処理したステンレス鍋ではご飯粒がこびりつきにくくなりました。
これが透明ジルコニアを半分コーティング処理したステンレス鍋で炊飯した結果です。
ご飯の炊き方は以下の通りです。
電気炊飯器にはなぜフッ素コーティング加工が必要だったか?
電気炊飯器の内側はほぼ全商品にフッ素樹脂コーティング加工がされていますが、これは炊飯器に保温機能がついているためと思われます。ご飯が炊けた後、加熱をやめて蓋をしたままわずか10分間でも自然冷却して蒸らすことができればフッ素樹脂加工のないステンレス鍋でもご飯はさほどくっつきません。この蒸らしは、蒸気が冷めて水になりでんぷん糊が乾燥して固まるのを防ぐ作用があります。しかし、電気釜では保温のため、温度が高くて蒸気が水になりにくく、ここで蓋を開けたら一気にご飯の糊が乾燥して固まってくっついてしまうのは当然です。保温機能がなければフッ素樹脂を使わなくてもかまわないのでしょうね。今は電子レンジはどこにでもあるのですから、わざわざお釜で保温してご飯が炊かれすぎてまずくする必要なんてないと筆者は思うのですが。
フッ素樹脂コーティングの代わりに透明ジルコニアコーティングはいかがですか?
ジルコニアセラミックスはフッ素樹脂には及ばないものの、撥水性があります。これはジルコニア結晶中の酸素の原子間距離によって説明されますが、詳しくは専門書に委ねます。この弱い撥水性によってご飯粒がくっつきにくくなります。ジルコニアはフッ素樹脂ほどの撥水性がなくても、蒸らすなどの火加減の工夫でお釜や鍋へ十分適用できるのではないかと考えています。何といってもジルコニアは環境にやさしいというメリットがあります。もし、海に出ても、永久に海水に漂うなんてことはありません。ただの砂になって沈みます。体内に取り込まれたものが焼かれても毒ガスを出すなんてこともありません。
このブログに紹介した透明ジルコニアコーティングは、セラミックコーティングに使われる通常のゾルゲル法や溶射法よりも低い温度でステンレスに適用可能です。透明という特徴はデザインに活かすことができます。薄いために急熱急冷にも強くなりますが、研磨剤や金属へらは使うことができません。しかし、これはフッ素樹脂コーティングと同じで、今までと同じ使い方をすればよいだけです。この透明ジルコニアコーティングの工業用途にご関心があれば、下のボタンをクリックしてください。材料メーカのサイトへのご案内があります。