当ブログEmmariniでは廃棄時に環境負荷の大きいフッ素樹脂を使わないフライパンを提案しています。その中でもステンレスフライパンは大変優れモノで、予熱さえしっかりしておけば食材がくっつかずお手入れが簡単で、さらにはフッ素樹脂ではできない高温調理も可能なため料理の幅が広がることを紹介してきました。ノンオイル目玉焼きや焼き魚だってステンレスフライパンでもできます。

ところで、市販のステンレスフライパンの調理面には2種類の仕上げがあることにお気づきでしょうか?一つは、鏡面と呼ばれるつるつるの研磨仕上げで顔が映る程にピカピカにしてあります。説明書には平滑なため汚れがくっつきにくくお手入れが簡単と記されています。もう一つは、顔が映らない粗面仕上で、ヘアラインあるいは梨地と呼ばれるざらざらした面です。説明書には、油がなじみやすく、食材との接触面積が小さくなるためくっつきにくくお手入れが簡単と記されています。「どっちやねん!」とつっこみたくなりますね。

素直に考えると表面がつるつるしていた方が、引っ掛かりがないため食材や汚れがくっつきにくく、お手入れも簡単と思われます。しかし、下の図のように表面がざらざらしていると、食材が面ではなく点か線で支えられるためにフライパンとその接触面積が小さくなるためくっつきにくく、油も溝に沿って広がりやすくなるためによりくっつきにくくなると説明されています。

つるつるフライパンとざらざらフライパンの違い

ざらざらした面は確かに食材がくっつきにくい。しかし、溝にはまった汚れが手入れしにくい。

ステンレスフライパンのつるつる面とざらざら面の違いは、ざらざら面は溝よりも大きい食材はくっつきにくいのですが、油のように溝に入る汚れは喰いついて簡単にはきれいにならないということです。一方、つるつる面では食材はくっつきやすいのですが、こびりついても比較的簡単に落とすことができます。下の写真ではざらざら面に入った油汚れが洗っても落ちにくいため黒くなってしまったことを示しています。

つるつる表面のステンレスフライパンに故意にやすりで無数の傷をつけてしばらくの間調理に使ってみました。肉や魚は確かに凸凹表面にくっつきにくくなるのですが、油汚れが溝の部分にこびりついて強固な油焦げになってしまい取れなくなりました。つるつるだと油こげもメラミンフォームできれいになります。

ステンレスの魅力は何と言っても見た目の美しさが肝心

例えば鉄のフライパンだと、油汚れがこびりついていても、素地は黒で汚れが目立たない上に、それが錆止めになるため非常に好都合です。シーズニング(年季入れ)と言って推奨されていますし、それがむしろかっこいい。しかし、ステンレスでは素地は銀色の外観のため油汚れが汚く目立ってしまいます。また、錆び止めもステンレス自体が錆にくいのであまり必要ではありません。ステンレスの魅力は文字通りステンレス(汚れがない)で、このフライパンが汚れていてはせっかくの価値が下がってしまうと考えられます。こうなるとつるつるの方が良いということになりますが、これは調理中食材がくっつきやすい欠点があり、また、つるつる面に傷がついてしまうとこれが醜く目立ちます。結局どちらが良いかは、どちらにも欠点があるため結論できません。これではまだ脱フッ素樹脂の本命と説得できそうもありません。

ここからが、ステンレスフライパンのざらざら面に汚れがつかないようにする方法の提案です。

そこでEmmariniではざらざらしたステンレスフライパンの溝の部分を透明なジルコニアコーティングで処理することにしました。下図のようです。ジルコニアは化学式ZrO2で表されるセラミックスの一種で、特に化学反応性が小さいことが特徴です。化学反応性が小さいとはつまりくっつきにくいという意味です。ガラス、シリカ、アルミナなどの他のセラミックスやステンレス本体よりも化学反応性は小さく弱い撥水性(弱い親水性とも言える)があります。フッ素樹脂よりは化学反応性は大きいのですが、その代わりに耐熱性ははるかに大きく、強火OKという特徴があります。Emmariniで作成したジルコニアのコーティング液は液の状態では化学反応性が大きく、ステンレスとは250℃以上の高温になるとよくくっつく性質があります。一旦くっついた後は安定なコーティング層となり化学反応性が小さくなりますので、食材や汚れはくっつきにくく、沸騰水や酸とアルカリには浸食されません。また、コーティングは溝の中にあるので簡単に剥がれることはありません。

溝の深さは、1~10μ、透明ジルコニアコーティングの厚さは0.1~1μですので溝が埋まってしまうことはありません。これだと肉はくっつきにくいままであり、溝に入った油汚れは油焦げになってもジルコニア表面から落ちやすくなることが期待できます。

実際にステンレスフライパンを試作して効果を確認してみました。

透明ジルコニアコーティングにはこのように、汚れの蓄積を防いでお手入れを楽にする効果が確認できました。

アルミホイル(アルミ箔)を丸めたものでたわしのようにこすっても焦げ落としには効果的です。

透明ジルコニアコーティングは汚れ防止だけだなく、ステンレスフライパンの装飾にも応用できます。

ジルコニアコーティングはガラスコーティングよりも屈折率が大きいため、ステンレスにコーティングした場合、深みのある反射光になります。また光の干渉作用も強くなるため、角度によって淡い青や黄色が見えてきます。

透明ジルコニアコーティングは炊飯にも適します。ご飯粒がくっつきにくくなります。

さらに炊飯の場合は、ステンレス表面にざらざらがないほうがよりくっつきにくくなります。溝があると、ご飯のでんぷん糊が乾燥すると溝にはまった部分が食い込んでから固まるためにこびりついてしまいます。

Emmariniでは環境負荷の大きいフッ素樹脂を使わない調理器具を目指します。環境以外にもフッ素樹脂ではできない高温調理による料理法の幅の拡大を目指します。

ブログショップにステンレスフライパンに猫の親子と文字を彫刻してから透明ジルコニアコーティングした作品を展示中です。