今回は、柔らかくて曲げやすいアルミ食器について説明します。セラミックコーティング液をEMMARINIのブログショップで、アルミ板をホームセンターや通販などでお求めいただければご自作いただけます。

こんにちは。当ブログEMMARINIでは、廃棄時の環境負荷が大きいフッ素樹脂を使わずに、透明でごく薄いセラミックコーティングをアルミニウム表面に処理した調理器具について紹介しています。ここ数回のブログでは、市販のアルミ(合金)板を基材として、沸騰水道水による黒化反応で描画してこれを透明セラミックコーティングで保護してから、ペンチなどで曲げて成形する多機能性食器を自作しました。今回は、ペンチを用いずに手で曲げられるよう、もっと柔らかい焼なました純アルミ製の薄い基板を用いた例を紹介します。人気の錫の板は手で曲げてお皿にすることができますが、錫よりも安価なアルミの板でも可能です。黒と銀色の模様で簡単に装飾ができるのが錫板にはない特長です。

1.薄い純アルミ板を用意して魚焼グリルで加熱して焼きなまして柔らかくします。

手で曲げられるようにするためには、加熱すると柔らかくなりやすい純アルミ板(アルミ合金1000番台)で厚さが0.5mm程度が適当と思われます。過去記事ではフライパンやグリルプレートとするために高温に強いアルミ合金板(アルミ合金5000番台)を使って厚めの1mmを推奨していました。純アルミ板は高温使用(250℃以上)すると変形変色が起こりますが、ここではその柔らかくなる性質を利用します。ただしフライパンには向かなくなります。

この商品はアルミ板規格の1000番台であることは確認しましたが、仕様変更があるといけないので念のためご注文の際はご自身でもご確認お願いいたします。当ブログでは広告収入を得ています。アルミ板を切り出すときはカッターナイフを使うのが良いでしょう。金切りはさみだと板が曲がってしまいます。カット面は手を切らないようにやすりなどで丸くします。

アルミ板をガス魚焼グリル(両面焼き推奨)に入れます。350℃程度になるので純アルミは焼きなまされて手で楽に曲げられるほどに柔らかくなります。加熱は20分程度で消火後はグリル内でゆっくりと冷ましてください。電気オーブンだと250℃にしかならないため、アルミ板はあまり柔らかくなりません。

2.アルミ板を装飾する。

焼きなましたアルミは、研磨模模様やハンマーで叩いて模様をつけることができます。また、ラッカーや油性インクを用いて文様を描いおくと後工程の黒染めのマスキングにすることができます。前回ご紹介したステンシル技法も利用できます。

装飾例として毛筆で漢字を書いてみました。墨では水で溶けてしまうので、詰め替え用の油性マーカーインクを用いています。アルミ表面に1000番程度の磨き目をつけておくとインクの乗りがよくなります。

筆を洗うには、除光液かラッカーシンナーを使います。

3.沸騰水道水のアルミ黒色化反応により黒く染める

重曹入りの沸騰水道水でアルミは黒くなります(黒化反応)。絶対に浮き上がらないよう注意してください(写真では右下隅をクリップで留めています。

写真のように、アルミ板が入るサイズの鍋に水道水を入れて沸騰させます。重曹を小さじ1入れてからアルミ板を入れます。アルミ板は薄くて軽いので沸騰のバブルで浮き上がることがあります。水蒸気(つまりは蒸留水)に触れるとアルミは黒くなりませんので要注意です。バブルが発生しないように弱火で蓋をするのが良いでしょう。筆者は四隅にクリップをつけて浮かばないようにしています。純アルミは反応速度が大きいため30分位で黒くなります。時間が長いほど黒くなるわけではなく逆に白くなってくる謎があるので要注意です。このアルミの黒化現象のメカニズムはので解明されていないのでいい加減なことは言えないのですが、光の干渉作用で黒く見えるだけで、何か色の黒い物質ができているわけではないようです。

4.マスキングを取り除いて、透明セラミックコーティング液を塗布します。

黒染めしたアルミ板を除光液とクエン酸で洗浄してから、透明セラミックコーティング液を塗布します。

シンナーか除光液で油性インクのマスキングを取り除くと文字は黒地に白く現れます。写真のようにこれに透明セラミックコーティング液を塗布します。塗布前に表面についた水垢を取り除くため小さじ1のクエン酸に中性洗剤を少量掛けてスポンジでやさしく洗っておくとよいでしょう。コーティング液の容器はスポンジヘッドになっています。これで塗布したのち過剰の液をティッシュペーパーで均一に伸ばしながらふき取って薄くします。乾いたら再び塗布とふき取りを3回繰り返して均一にします。塗装一般論ですが薄く重ね塗りするのがきれいに仕上げるコツです。一度に厚くしてしまうとムラなどができてしまいます。

ガスコンロで加熱することも可能です。極弱火にしてください。火が強いと純アルミの黒色が脱色してしまいます。

焼き付けは、オーブンだと250℃で10分間行います。写真のようにガスコンロでも可能です。ごく弱火でも250℃になり、5分程度加熱します(温度が上がりすぎないようにSiセンサーが作動したら消火してください)。

透明セラミックコーティング液です。ブログショップEMMARINIで販売しています。誤差は多々ありますが、理想的には1本で20㎝角のアルミ板両面約50枚も塗布できます。写真をクリックしていただくとブログショップにジャンプします。使用には保護手袋とゴーグルをご使用ください。

透明セラミックコーティング液は、シリカを含有する弱アルカリ性の水溶液でアルミニウムと化学結合して表面を保護します。セラミックスですが非常に薄い(1ミクロン以下)ため曲げることができます。アルマイト加工被膜(10ミクロン超)は曲げると割れてしまいます。沸騰水や食洗器で剥がれることはありません(ただし、中性食洗器洗剤推奨)。食品衛生法基準にも適合しています。ただし、今回は柔らかい純アルミを使用していますので、過去に紹介した(アルミ合金5000番台)のように鉛筆硬度6H~9Hはなく、250℃を超える直火フライパン用途にも適していません。グリルもガスの場合は温度が350℃以上になるので使用はお控えください。

曲がるアルミ皿の使用例を紹介します。

四隅を45度に曲げると汁がこぼれないお皿になります。
リセットするとこうなります。皺は完全には伸びません。
ステンシルで装飾した例です。ステンシルシートは多くのがデザインのものが販売されています。
文字ではなく叩いて凸凹模様をつけた例です。柔らかいので叩いたり磨いたりしての模様も素敵です。
コップに巻いて花を生けると黒い金属光沢が良い感じになります。
表を銀、裏を黒にすることもできます。これを折り曲げると粋な2トーン菓子皿になります。
柔らかいのでハサミで切ることもできます。角を丸くしました。切断折り曲げ加工してかしめると面白い容器ができそうです。
やすりで削って手を切らないようにします。
透明セラミックコーティングは親水性なので油性マーカーの落書きも濡れたスポンジだけで落とすことができます。このため食洗器洗浄では、何に対してもダメージが大きいアルカリ性洗剤を使わなくても、中性洗剤でも油汚れを落とすことができます。

錫のように手で曲がるアルミ皿いかがでしたでしょうか?個人的には、将来キッチンをもっとコンパクトにできるのではないかと考えています。伸ばしておけば収納スペースは減りますし、食洗器もコンパクトにできます。軽くて割れないのも魅力です。尚、割れない代わりに曲げ伸ばしによる金属疲労でいつかは寿命が来ることはご了解お願いします。最後に錫とアルミの違いをまとめておきますが、善し悪しの判断基準ではありません。

性質アルミ
価格高い安い(約1/10)
黒染め特殊薬品沸騰水道水と重曹
比重7.32.7 (約1/3)
耐食性強い弱いので透明セラミック
コーティングで保護

本件技術は特許取得技術です。特許開放しておりますので、詳しくはメニューボタンから工業用コーティングにお進みください。