1.はじめに 

こんにちは、EMMARINIです。 当ブログでは、廃棄時の環境負荷の大きいフッ素樹脂に代わる、親水性セラミックコーティング技術を紹介しています。 この技術はアルミとの密着性に優れ、フライパンのような高温・高摩耗の用途にも対応可能。しかも、一般の方でも特別な設備なしで塗装、再活用できる手軽さが魅力です。

今回は、前回のぐい呑みに続き、より大きめのアルミ茶碗やシェラカップのDIY制作に挑戦します。鍛金加工による造形美と、セラミックコーティングによる機能性の融合で、唯一無二の器を作ってみませんか?

1) DIY鍛金でつくるアルミ茶碗・シェラカップの魅力

  • ハンマーひとつで始められる鍛金加工。ステンレスのように固くないので成形が楽。
  • 成形後の磨きで得られる美しい金属光沢。陶磁器にも劣らぬ黒と形の渋み。落としても割れません。
  • アルミは安価で、環境にやさしい。
  • ただ、アルミは腐食しやすく汚れが付きやすい欠点があり、表面処理の必要があった。

2)表面処理の選択肢とその限界

  • アルマイト加工:耐食性は優れているが、技術的ハードルが高く、一般的なDIYには不向き。
  • 樹脂塗装:耐熱性が低く、食器用途では残留モノマー管理問題もあるため、一般的なDIYには不向き。
  • EMMARINIのセラミックコーティング:DIY可能で高温にも耐え、人畜無害の理想的な選択肢。

4)EMMARINIのセラミックコーティング

  • 特殊な設備不要、コンロかオーブン程度の加熱器があれば家庭でも施工可能。
  • 親水性で汚れが付きにくく、洗浄性も高い。
  • 厚さ1ミクロン以下の透明なコーティングで金属光沢を活かした美しい仕げが可能。
  • 食器として安全な沸騰水道水による黒染めや食用染料による淡い着色が可能。
  • 食洗器対応(中性食洗器洗剤を推奨)。

5)失敗してもアートになる

  • 成形に失敗しても、ランプシェードや小物入れに再利用可能。
  • 表面の質感を活かした装飾アイテムとしても魅力的。

2.それでは実際のアルミ茶碗、シェラカップの作り方を紹介します。

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1)アルミ板の用意

  アルミ板のお勧めは、純アルミ(1000番台として販売されている)で、バーナーで400℃程度に加熱すると柔らかくなり成形が楽になります。他にも5000番台として一般に販売されている合金タイプがありますが、こちらは硬く成形がややしにくくなります。ただし、フライパンのように高温での強度が必要な場合はこちらがお勧めです。厚さは、お好み次第ですが1~2mmが良いでしょう。薄いほど成形はしやすいのですが、ある程度厚みがあると見栄えが良くなります。以下は参考例です。本ブログでは広告収入を得ています。

アルミ板は15㎝角にはさみかカッターで切断してからガスコンロで焼きなましをします。400℃程度まで加熱する必要があるのですが、都市ガス用コンロの場合はSiセンサーが作動して250℃にしかなりません。そこで写真のような器具でセンサーを作動させなくすることができます。

カセットコンロやカセットバーナーをお持ちの場合は直接炎を当てます。中火空焼き3分程度で400℃程度になります。加熱後は自然冷却します。手で曲げてみて、少し柔らかくなったと感じられれば十分です。

熱電対温度計があると温度管理が便利です。

焼きなましの後は、金切りばさみで丸く切断します。写真のように角を残すとその部分がシェラカップのハンドルになります。

2) 叩いて成形

板をハンマーで叩いて成形します。お皿の形をした型があれば便利です。下の写真のような配管用塩ビ製のインクリーザーやキャップがあれば便利です。型がなくても成形は可能です。ただ、ハンマーだけは必要です。

インクリーザーの断面はこんな感じです。
インクリーザーにアルミ板を置いて叩くとすっぽりはまって成形されていきます。
キャップ表面の文字の凸凹は削っておきます。そのままだと転写されてしまいます。
キャップにお椀をかぶせて側面を叩いて絞っていきます。
絞っていくと元より口が小さくなります。何回も繰り返します。
仕上げに硬い鉄のハンマーを使うと槌目模様ができます。
表面仕上げは研磨剤で磨いて光らせます。光らせ方はお好み次第。私は180番程度の回転ドリルで研磨して現れる方向性のある強い金属反射が大好きです。また、ピカールで鏡面研磨されると実に美しい鏡面金属光沢が得られます。磨いた後は、住居用のアルカリ性洗剤とトイレ用の酸性洗剤で手早くこすり洗いしておくと、油分や酸化膜が除去されて後の黒染め発色がうまくいきます。
叩き方にもよりますが、外側はよく光ります。

3)黒染めとセラミックコーティング

黒染めは、アルミを沸騰水道水に浸漬しておくと黒くなる黒化反応を利用します。油性インクで描画しておくとインクを塗った部分がマスキングされて黒く染まりません。インクは後で有機溶剤で取り除きます。さらに詳しい黒染め方法は上部右側のメニューから、サイト内検索をクリックし”マニュアル”で検索してください。フライパン、食器、板などの黒染めによる装飾方法を記載しています。この黒染めの層はこのままではあまり丈夫ではないので、透明なEMMARINIのセラミックコーティングで保護すると、丈夫になります。コーティング液はブログショップで販売しています。これらの技術は特許技術になりますが、ブログショップでお買い上げいただいたコーティング液をお使いいただいた作品を販売される場合は特許料は発生しません。

今回作成のお椀とシェラカップに、黒染めで描画し、別作成の曲がるお皿と蓋を組み合わせてみました。黒染めでは模様の他に、180cc(一合)のメモリを入れておくと計量に便利です。

4)叩いているときに穴が開いてしまったらランプシェードに

叩き成形中に叩きすぎて穴をあけてしまうことがあります。その時は悲観しないで、穴の形を整えてランプシェードにすることができます。写真の上部にあるのがLED電球にかぶせたものです。アルミは可視光の透過率がゼロで反射率がほぼ100%ですので、暗さと明るさが両立します。電球が熱くなっても問題はありません。

3.お勧めの使い方。熱伝導の高さを利用した器

アルミの熱伝導率を大雑把に100とすると、錫は30、ステンレス・陶磁器・ガラスは10、樹脂は1です。このため、いつもよりビールやお酒の冷たさが直に下唇に感じられる素晴らしい体験が得られます。アルミにアルマイト処理すると、熱伝導が10のアルマイト層が10ミクロン以上もありますので冷たさがかなり伝わりにくくなります。缶ビールのアルミは熱伝導が1の樹脂が10ミクロン以上も処理されていますのでさらに冷たさが感じられません。EMMARINIのセラミックコーティングは熱伝導率が10ですが、厚さが1ミクロン以下ですので熱の遮断はこれらよりもはるかに小さくなります。本当なら、何も処理していない無垢のアルミが理想ですが、腐食と汚れで長くは使えません。銀銅金はこの順でアルミよりも熱伝導が大きい金属ですので懐に余裕があればぜひお試しください。ただし、熱伝導が大きいということは逆にあたたまりやすいということですので、冷たい飲み物は速やかに粋に飲んでしまうことが大切です。

冷たいビールの容器とお刺身の皿で冷感がアップします。
オンザロックでも冷たさが直に伝わります。

その他、シェラカップですので直火調理器具としても使用可能です。

まとめ|あなたの手で、物語のある器を

DIYアルミ鍛金は、技術と感性が融合する創作体験。 使うたびに味わいが深まり、形が変わっても美しさを失わない——そんな器を、あなたの手で生み出してみませんか?

次の週末、金槌を手に取ってみましょう。 きっと、あなたらしい物語が器に宿ります。