当ブログ、エマリーニ、では、アルマイトではなく、アルミ合金素地を黒色化反応で黒く発色させ、親水性透明セラミックスをゾルゲル法でコーティング保護したフライパンを紹介しています。これの特徴は、アルマイトよりも、耐熱耐熱衝撃性が優れており、食材がくっつきにくく、水洗いできれいになるため、フライパンに適していることです。今回はアルマイトとの違いについて説明します。
エマリーニのブラックフライパンはこんな感じです。
エマリーニの特徴の、くっつきにくさ、汚れの落ちやすさの動画です。
アルマイトとエマリーニのゾルゲル法コーティングの違いを図示するとこうなります。
アルマイトとエマリーニで使っているゾルゲル法コーティングとアルマイトの比較表を作りました。
調理器具性質 | エマリーニ ゾルコーティング | 通常 アルマイト | 備考 |
耐熱性、耐熱衝撃性 | 非常に強い。400℃でも亀裂なし。 | 200℃上限。亀裂が入る。 | 厚さが小さいとひびが入りにくい。エマリーニは1ミクロン以下。アルマイトは十数ミクロン。アルマイトを薄くすると他の長所が相殺されてしまう。注1) |
着色性 | 現状は黒、金、元の銀 | 染料を用いて自由。 | アルマイトは染料を孔に入れることができる。ただ、染料自体の耐熱性も小さいため高温対応は難しい。一方で、エマリーニには孔がないためアルミ自身を発色させている。注2)注3)注4) |
傷つきやすさ | 1ミクロンで鉛筆硬度9H | 厚くしないと硬くならない。 | アルマイトは硬くなく、さらに孔があるため厚くしないと硬くならない。エマリーニには孔がなく、薄くても硬くなる。ただし、どちらも研磨剤や金属へらでは傷がつく。注4) |
くっつきにくさ,ノンオイル | 250℃以上予熱するとくっつきにくい。 | 250℃以上に予熱すると亀裂が入る。 | 250℃以上の予熱で吸着水脱水とライデンフロスト効果によりくっつきにくくなる。動画参照。注5) |
お手入れ | 親水性大により油汚れが洗剤なしで除去 | 油汚れには洗剤が必要 | 親水性が大きいと、表面が油よりもより水になじみやすいため、汚れが落ちやすい。動画参照 |
耐酸耐アルカリ | 沸騰重曹水で白化しない。沸騰クエン酸は不可。 | 沸騰重曹水も沸騰クエン酸も不可 | エマリーニの方が耐アルカリ性は良い。酸についてはどちらもpH2程度(レモン原液、食酢原液)を煮立たせるのは不可。pH4のトマト煮込みは可。 |
調理器具として | フライパンも鍋も可能 | 鍋は可能。フライパンには厳しい。 | エマリーニの着色は水道水による自然な黒色化反応で調理面にも使用可能。染料は耐熱性、および顔料(カーボンブラック等)は安全性規制および膜厚を大きくしなければならないため使っていない。 |
注)補足説明
注1)アルマイトは、アルミニウム(Al)表面を電気的に酸化させてアルミナ(Al2O3)という一種のセラミックスで被覆する技術です。アルミナはアルミニウムよりも、化学反応性が小さく硬いので、アルミニウムを腐食や傷などから保護することができます。ただしアルマイトのアルミナは、同じアルミナのルビー、サファイアほど硬くはありません。アルマイトの弱点を上げれば、耐熱耐熱衝撃性が小さいことです。通常使用温度上限は、150~200℃といわれています。アルマイトは鍋(煮炊きする)には使えるのですが、フライパン(焼く)用にほとんど見ないのはこのためです。アルマイト被覆は、厚いため、素地アルミと熱膨張収縮率、熱伝導率の違いによるひずみが大きくなり、高温になると亀裂が入ってしまいます。急熱急冷はさらにひびが入りやすくなります。亀裂が生じないようにするには薄くすればよいのですが、アルマイトの特徴(保護効果や着色)が不十分になってしまいます。
注2)このアルミナ被覆層には非常に小さな孔が無数にあり、この中に染料を入れてから封じ込めれば(封孔)、色付けで装飾することができるます。しかし、染料の耐熱温度も200℃程度ですのでフライパンにはあまり適していません。
注3)当ブログ、エマリーニ、で使っているゾルゲルコーティングもセラミックスですが、これにはアルマイトのような染料を入れる孔はありません。したがって、色を付けるためにアルミ自身を発色させます。
注4)ゾルゲルコーティングは無色透明で、化学反応性も小さく、孔がないため薄くても硬いコーティングができます。1ミクロン以下の厚さならば、熱膨張と熱衝撃による亀裂も生じにくくなります。発色は、水道水中に含まれる微量の鉄とカルシウムがアルミニウムと化学反応して黒くなる性質を利用します。厚さは1ミクロンにも満たないのにあれだけ黒くなるのは実に不思議な現象です。無害であることも証明されていて(有害だとすると水道水もアルミも有害ということになる)、この黒をゾルゲルコーティングで保護しています。食品衛生法にも適合しています。
注5)ライデンフロスト効果とは、熱したフライパンに少量の水を垂らすと、蒸発による噴射で水玉となって浮遊するため、蒸発に時間がかかる現象。蒸発時間は300℃で極大になることが知られている。このため、予熱しておくと食材にも浮遊しようとする力が働き、くっつきにくくなると考えられます。