アルマイト層を剥がして、より薄いシリカ系セラミック層に置き換えると熱伝導効率をよりよくすることができます。加えて、黒染めによる描画ができて、耐酸性、耐薬品性、耐擦傷性、洗浄性が改善されます。
1.アルミは熱をよく伝えるので解凍、製氷が早くなる
SNSなどでアルミバット(以下、トレイも含む)を使って、冷凍食品を早く解凍したり、逆に冷凍庫で早く製氷したりする方法が紹介されています。これは、金属のアルミニウムが熱を速く伝える性質(熱伝導率)を利用したものです。ちなみに、さまざまな材料の熱伝導率を大まかに示すと、アルミを100とした場合、鉄は50、ステンレスは10、ガラスまたは陶磁器といったセラミックスは10、テフロンなどの樹脂は1程度になります。このことから、この解凍・製氷目的のためにはバットはアルミ製でなければならず、ステンレス、ホーローや樹脂のバットでは、たとえアルミホイルを敷いても、ホイルは薄すぎて熱を多く伝えることができず、早く解凍できません。もちろん、樹脂塗装品も早くなりません。ある程度の厚さのアルミバットが必要です。(注:金、銀、銅はアルミよりもさらに熱伝導率が大きいのですが、バットにするには高価すぎるため現実的ではありません。)
2.アルマイト加工は熱の伝わりを妨害する
しかし、アルミ製のバットでも、アルマイトと呼ばれる表面処理加工されたものは、加工されていない無垢のアルミよりも熱伝導性が小さくなる問題があります。アルマイト加工とは、無垢のアルミ表面を酸化してアルミナと呼ばれるセラミックス層を形成し、腐食や傷から保護するためのものです。アルマイト層の厚さは数十ミクロンありますが、このアルマイト層の熱伝導率は元のアルミの10分の1しかありません。そのため、熱の伝わりが阻害され、解凍や製氷により多くの時間がかかることになります。市販のアルミバットを調べてみると、アルマイト加工と表示されているものが多く、やはりアルマイト加工なしではお手入れなどの取り扱いが面倒になるためと考えられます。また、アルマイトと書かれていなくても、結局はアルマイト加工されているものもありますので、購入される場合はよく調べてください。
3.無垢のアルミバットがない時の最強解凍・製氷ツールは無垢のアルミフライパンか工作用のアルミプレートです。
無垢のアルミフライパンはアルマイト処理されておらず、しかも厚いので最速で解凍できます。アルマイトは炒め料理すると亀裂が入るため、通常のアルミフライパンには使われていません。しかし、取っ手が邪魔で冷凍庫にアルミフライパンは入れにくく、製氷には向かない問題があります。それならば、工作用のアルミ板なら冷凍庫にも入れやすくなります。工作用のアルミ板はホームセンターなどで売られており、表面は表面処理のない無垢の状態です。これだと解凍、製氷のどちらにもぴったりです。
しかし、無垢のアルミの欠点は耐食性があまりよくないことです。食品に含まれる塩分と酸および洗剤のアルカリによって腐食が促進されます。また、汚れを吸着しやすいためにお手入れが大変なうえに傷もつきやすい問題があります。1円玉は無垢のアルミですので、これを連想すれば、食品関係には使いたくないと思います。つねにごしごし磨いて清潔にしておかなければならず、面倒です。だからこそ、熱伝導性を犠牲にしてもアルマイト加工が普及しているわけです。
4.EMMARINIのシリカ系コーティングはアルマイトよりも薄くできるのが特長で、熱伝導の妨害が小さくなります。
EMMARINIのシリカ系コーティング自体の熱伝導度はアルマイト層のアルミナとあまり違いはありませんが、厚さがアルマイトの数10ミクロンよりもはるかに薄い1ミクロン以下です。このため、熱の伝わりの妨害が小さくなり、解凍と製氷が無垢アルミにはかなわないとしてもアルマイトよりは早くすることができます。EMMARINIのシリカコーティングはこのように薄くても、アルマイトよりもさらに耐熱性、耐食性、硬度、清掃性が優れています。アルマイトのような多彩な染色はまだできていませんが、沸騰水道水による黒染めが可能で、自作が簡単で描画できる特徴もあります。
5.アルマイトを剥がして、EMMARINIオリジナルのバットを作ってみました。
上の写真のようにシリカ系コーティング処理したアルミシェラカップを使えば大きめの氷も一晩で十分できます。シリカ系コーティングは親水性なので氷がすっぽりと取り出せます。シェラカップもアルミ製で熱が伝わりやすいため氷とカップの接着面の氷が速やかに溶けて水膜になって滑るためと考えられます。
四角いアルミメスティンを使えばブロックアイスも早く作れます。四角いので場所を取りません。アイスピックを使えばかちわりにできます。
6.アルマイトとこれを剥がしたEMMARINIオリジナルカップで氷ができる早さを比較しました。
2時間経過後です。氷はじめですが、黒のEMMARIのコーティングの方が銀のアルマイトよりも氷の量が多く見えます。
アルマイトとEMMARINIオリジナルのシリカ系コーティングの氷のできる早さの比較実験を行いました。アルマイトカップを2つ用意し、一方はアルマイトそのまま、もう一方はアルマイトを剥がして黒染めで模様を描き、シリカ系コーティングで表面を保護しました。同量の水をカップに入れ、冷凍庫に並べて所定時間ごとに取り出して凍結具合を観察しました。上の写真では、黒染めしたEMMARINIのカップが若干早く氷ができるのが見られました。ただ、アルマイトでも結局は追いつく結果になりました。
7.おわりに
アルミで氷を早く作られれば、特に夏には便利ですね。今回は氷とアルミについてご紹介しましたが、普段は、当ブログEMMARINIでは加熱して使うフライパンのコーティングで廃棄時の環境負荷が大きいフッ素樹脂に代替する透明なシリカ系セラミックコーティングを提案しています。フッ素樹脂コーティングに対抗できる環境にやさしい材料としてはアルミニウム表面に酸化アルミニウム層を設けたアルマイトが挙げられますが、どうしても耐熱性と洗浄性で劣るため、鍋には使えてもフライパンには無理がありました。EMMARINIのシリカ系セラミックコーティングならば、この問題を解決できます。他にもフライパンについての記事をいくつか書いておりますので、右上のメニューボタンからぜひご覧ください。