アルマイト処理が難しいアルミダイカストに対応可能で、アルマイトよりもより耐アルカリ性、耐熱性、防汚性、耐擦傷性が優れたセラミックコーティングです。

アルミダイカストハンマーの黒染め例です。
黒染めの白黒反転も可能です。

ブログEMMARINIでは、アルミフライパン向けに、廃棄時の環境負荷が大きいフッ素樹脂に代わる、オリジナル特許技術の透明なシリカ系セラミックコーティングを紹介しています。今回、このコーティングをアルマイト処理が難しいとされるアルミダイカストに処理してみました。ダイカストにはSi(ケイ素)成分が多いアルミ合金が使われますが、この異成分Siがアルマイト処理を難しくさせています。しかし、シリカ系セラミックコーティングにとってはSiは同成分でO(酸素)が介在するため処理の妨害にはなりません。したがって、密着性の高いセラミックスコーティングを得ることができます。

アルミダイカストハンマーにセラミックコーティング処理した工程例です。

1.脱脂洗浄します

例として、市販のアルミダイカスト製ハンマーを用意しました。肉叩きに使用します。ダイカスト特有の金属光沢と、少々ス(孔)がありました。これを弱アルカリ性洗剤で脱脂洗浄します。当ブログではこのリンクによりアフィリエイト収入を得ています。

2.油性マーカーで描画します。これが黒染めのマスキングになります。

油性マーカーは熱水でも剥がれないため、水性塗料と、黒染めのマスキングに使用することができます。
ハンマーの2面に油性マーカーで描画しました。

3.マーカー描画部分を黒のまま残したい場合はセラミックコーティングを塗布します。白抜きにしたい場合は、まだセラミックコーティングは不要です。

描画の白黒をそのまま残したい場合は水性のセラミックコーティング液をここで塗布します。一度に厚くすると白くなりますので、「塗布→ティッシュで液を伸ばしながら余剰分をふき取り→自然乾燥」の手順を3回繰り返します。大量生産ではディップが効率的で、この場合は「浸漬→液切り→自然乾燥」の手順は1回になります。これを250℃で10分程度焼き付けます。セラミックコーティング液は文末にあるブログショップで受注販売しています。
焼き付けた後はラッカーうすめ液などの有機溶剤で油性マーカーをふき取ります。マーカーがあった部分は抜けてアルミがむき出しになるため、ここが黒染めされることになります。

4.沸騰水道水による黒化現象を利用して黒染めします。

ハンマーを鍋に入れて水道水を満たし沸騰させて黒染めします。
40~60分で黒くなります。アルミの黒化現象については、水道水中の鉄やカルシウム分などのミネラルがアルミと反応して層を作るためですが、なぜ黒く見えるかはわかっていません。安全性についてはWHOで確認されていますのでご安心ください。
黒染め後です。油性マーカーはまだ残っています。
油性マーカーを有機溶剤で取り除くと描画が白く抜けます。
反対側のセラミックコーティングしておいた面は、描画の部分が黒く染まります。油性マーカーで描いたもとの描画と同じに見えますが、黒い部分は水道水中のミネラルであるため、もはや有機溶剤には溶けません。

5.すべての面をセラミックコーティング処理します。

「塗布→ティッシュで液を伸ばしながら余剰分をふき取り→自然乾燥」の手順を3回繰り返します。大量生産ではディップが効率的で、この場合は「浸漬→液切り→自然乾燥」の手順は1回になります。
こちらの面も塗布します。白い部分は2重塗になります。柄の部分も塗布してください。
オーブンで250℃10分焼き付けて完成です。

6.性能評価をします。鉛筆硬度と油性インクふき取りテストです。

最も硬い9Hの鉛筆で表面をこすります。中央の小さい星の下あたりに3本太めの線を引きました。
引いた鉛筆の線の下半分をふき取りましたが、剥離や傷跡は見えません。これで鉛筆硬度9H以上になります。元のダイカストの鉛筆硬度は2H程度でしたので、さらに傷がつきにくくなっています。透明セラミックコーティングの膜厚は1μmにも満たないですが、硬度は大きくなります。また、薄いからこそ熱衝撃による亀裂や剥離も生じにくくなっています。
次はお手入れ性テストです。油性インクでらせん状に落書きします。
落書きを水で濡らしたティッシュで半分拭き取りました。落書きのあとは全く残っていません。塗膜の耐汚染性JIS規格指定の有機溶剤を使わなくても水拭きで油性インクがふき取れてしまいます。これはコーティングが親水性のためです。

最後までご覧いただきありがとうございました。透明セラミックコーティングの強さはアルミと化学的に結合して一体化するためと考えています。薄膜ゆえに透明で、熱衝撃にも耐えることができます。コーティング液はこちらで入手可能です。