紫外線、傷や汚れに強い金属製手作り表札の簡単な作り方を紹介します。アルミニウムを黒染めして透明なセラミックコーティングで保護します。

1.現状の手作り表札はプラスチック、木材、染料、塗料バインダーなどの有機物が使われており、屋外用にはあまり向いていません。

これら有機系の材料を使うとオリジナル表札も、手作りで特別な装置もなしで比較的簡単に作成できます。この表札を屋内で使う場合は耐久性に問題はないのですが、屋外の場合は、有機物は特に紫外線や傷に弱いため徐々に劣化してしまいます。表札が汚れているのはいやですよね。

2.屋外用はステンレスかセラミックス(タイル、石材)が通常使われています。

ステンレスの場合、文字や絵柄はレーザー光で加熱発色させて描かれています。塗料のような有機物が使われていないため耐紫外線は優れています。しかし、レーザー光が必要となれば手作りはとても無理だと思われます。

セラミックスも、紫外線に強い上に、ステンレスよりも傷や汚れ(特に指紋)に対してさらに優れています。しかし、制作に高温の窯や研削機などの装置が必要でこれも手作りはかなり困難です。文字や図柄が初めから描かれたタイルを組み合わせて作ることはできますが、これでは好きなデザインにできない問題があります。

3.当ブログEmmariniでは、アルミ板を沸騰水道水で黒染めして、透明なセラミックコーティングで保護する方法を考えました。有機物は使っていないので耐久性は抜群です。道具も家庭用のコンロとオーブンがあれば十分です。

 当ブログEMMARINIでは、アルミフライパン用に、破棄時に環境負荷の大きいフッ素樹脂の代わりに透明なセラミックコーティングを提案してきました。今回はこの技術をフライパンではなく、表札に応用しました。

以下アルミ製表札作り方のマニュアルです。

1.準備するもの

・表札にする無垢のアルミ板(あらかじめお好きなサイズにカットしたもの、通販やホームセンターなどで入手できます)

・サンドペーパーまたは研磨剤入りスポンジたわし

・中性洗剤と重曹

・下絵(表札にする文字や図柄)

・カーボン紙(下絵をアルミ板に転写するため)

・油性マーカー(アルミを黒染めするときのマスキングになる)

・アルミ板が入るサイズの鍋(水道水を沸騰させるため)

・水道水(水道水だけでアルミを黒染めできます。染料は不要です。)

・コンロ(上記鍋に水道水を入れて沸騰させるほか、セラミックコーティングの焼き付けに使用します。)

・オーブン(250℃でセラミックコーティングを焼き付けします。なければガスコンロのバーナーで代用できます。)

・エマリーニの透明セラミックコーティング(ブログショップで販売中、これはなくても黒染めは一応できますが、黒染めがむき出しで保護されていないためあまり丈夫にはなりまん。)

原料のアルミ板とセラミックコーティング液以外は、家にあったり、簡単に入手できたりするものです。アルミ板は例えば楽天で購入可能です。

セラミックコーティング液はEMMARINIのブログショップで販売中です。

当ブログでは商品販売収益を得ています。

2. 実際の手順は以下の通りにすすめます。

1)アルミ基板の研磨と洗浄

アルミ基板は傷がつきやすく、汚れもついています。これでは表札はうまく仕上がりません。傷は研磨で、汚れは洗剤で取り除く必要があります。

今回のアルミ基板は長方形のものを使いました。傷があるのでこれを研磨して消します。
傷消しには研磨剤入り不織布を使いました。サンドペーパーでもかまいません。粗さはお好み次第ですが、240~1000番程度が良いと思われます。弱アルカリ性洗剤と一緒に磨くと脱脂も同時にできます。研磨は微粒子の研磨剤を使うとピカピカの鏡面にすることもできますが、後述の作業中に傷がついて磨きなおしになる確率が高くなってしまいます。   艶消し仕上げの方が楽です。それに後述のマスキングの乗りもよく、仕上がりもいぶし銀のようになって決して悪くはありません。ピカピカ鏡面を屋外で使うと太陽光反射でまぶしくなる恐れもあります。

2)文字と模様を転写して、油性マーカーで塗りつぶして黒染めのマスキングをします。

表札の文字と図柄は下絵を作成しておき、カーボン紙でアルミ基板に転写します。

Emmariniの文字はPCのフォントを利用して好みのサイズに印刷しました。これをカーボン紙を使ってアルミ基板に転写します。
文字の輪郭を転写します。
転写した文字を油性のネームマーカーで塗りつぶします。ネームマーカーは水で消えませんのでマスキングになります。
文字だけでなく、猫と星の模様も加えて塗りつぶしました。

裏面も同様に文字と図柄を描きました。これでマスキングのできあがりです。

3)黒染めの前に、黒文字(背景がアルミの銀色で、文字と図柄を黒染め)の場合は、透明セラミックコーティング液を塗布します。白抜き(背景が黒染めで、文字と図柄がアルミの銀色)の場合は何もしません。

この面の白黒パターンをそのまま残したい場合は、この面に直接透明セラミックコーティング液塗布します。透明セラミックコーティング液は写真のようなスポンジヘッド容器に入っています。コーティング液は弱アルカリ性ですが、保護手袋と保護メガネは必ずご着用ください。
容器をさかさまにして塗布します。
液が厚くなりすぎるとコーティングが白くなりますので、ティッシュペーパーふき取りながらコーティング液を薄く伸ばします。コーティング液が自然に乾いたら、再び容器で塗布してティッシュペーパーでふき取り伸ばします。これを3回繰り返してコーティング層を重ねながら厚くしていくのがきれいに仕上がるコツです。一度に厚くしようとするのは禁物です。
セラミックコーティング液の塗布ができたら、これをバーナーで熱して固めます。温度は250℃にします(SIセンサー付きコンロならば250℃に自動調整されます。オーブンでも加熱可能です)。約10分間熱します。
冷めたら除光液をティッシュにつけて油性マーカーで描いた文字と図柄のマスキングを取り除きます。
強めにこすってマーカーを完全に取り除きます。
マーカーを取り除くと、透明セラミックコーティング層が残ります。この層はマーカーが元あった文字と図柄(猫)の部分にはありませんので抜けて見えます。

4)沸騰水道水で黒染めします。

アルミには沸騰水道水と接触すると黒くなる性質があります。アルミ製の鍋が黒くなってくるのと同じ化学反応です。これは水槽水中のわずかなカルシウムや鉄分がアルミと反応して薄い膜ができるためですが、なぜその薄い膜が黒く見えるのかは解明されていません。しかし、安全であることはWHOでも確認されています。Emmariniでは、この黒化現象を利用して黒染めをしています。

アルミ板を鍋に入れて、水道水に漬けて沸騰させて黒染めします。写真では先ほどのアルミ板の裏側が見えていますが、これの反対側が透明セラミックコーティングを塗布した面になっています。アルミ板に手垢や油性マーカーの汚れが染色部に残っている場合は黒染めにムラが出ますので、洗剤や除光液できれいに取り除いておいてください。重曹を一つまみ入れると黒化が促進されます。入れすぎると黒くならずに白くなりますので注意してください。
沸騰水道水黒染め後の裏側です。アルミむき出した部分が黒くなっています。油性マーカーのマスキングはまだ残っています。
これに除光液をかけてマーカーのマスキングを取り除きます。
メラミンフォームを使うと油性マーカーがきれいに溶けて、染まっていないアルミがむき出しになります。元のマスキング時点からは白黒反転しています。
表側はアルミむき出しの部分が黒く染まりました。元のマスキング時点に戻ったように見えますが、文字と図柄は黒染めされており、これはもはや除光液に溶けなくなっています。もちろん黒染めの黒には油性マーカとは異なり有機物は含まれておらず、紫外線劣化はしません。

5)透明セラミックコーティングで保護

黒染めは紫外線には強いですが、酸と摩耗に弱いので、丈夫な透明セラミックコーティングで覆って保護する必要があります。透明セラミックコーティングは当ブログEMMARINIのオリジナル商品で、アルミフライパン用に開発したシリカ系コーティング液です。食品容器安全性試験もクリアしています。スポンジキャップ容器に入っており、簡単に塗布できます。焼き付けは250℃以上でガスコンロやオーブンで可能です。

裏面から塗布します。アルミ素地むき出しの白く見える部分も黒染め部分も同時に塗布します。塗り方は先ほど表側で紹介した方法と同じで、「塗布→ティッシュで伸ばしながら余剰液ふき取り→自然乾燥」を3回繰り返して徐々に厚くしていきます。塗りすぎると白くなりますのでご注意ください。

表側は黒染め前にセラミックコーティング液を塗布しましたが、黒染めされた文字と絵柄の部分は塗布されていないので、再度セラミックコーティング液を塗布する必要があります。白い部分は2重塗になりますが、2回焼き付けになるので、コーティングが厚くなっても問題ありません。これも「塗布→ティッシュで伸ばしながら余剰液ふき取り→自然乾燥」を3回繰り返して徐々に厚くしていきます。
塗布の後は焼きつけます。前回はガスバーナーを使いましたが、今回はオーブンを使いました。250℃10分間です。

6)これで出来上がりですが、性能をテストしてみます。

9H(もっとも固い鉛筆)の鉛筆でコーティング表面をこすります。3本線をつけました。
鉛筆の線を半分ふき取ります。傷はついていません。これで鉛筆硬度9H以上判定になります。元のアルミの鉛筆硬度は2B程度でしたので、傷がつきにくくなったことがわかります。ステンレスでもHB程度ですので傷はこれらよりもかなりつきにくくなっています。
黒染め部分も9Hの鉛筆で線を引きます(ハイライトの中に線があります)。
鉛筆の線を半分拭き取りましたが、傷は残っていません。黒染め部分もも9H合格です。セラミックコーティングしていないと黒染めの鉛筆硬度は最も柔らかい6B以下ですので劇的な改善です。
油性マーカー落書きが水拭きできれいになるかのテストです。油性マーカーでらせん模様を描きました。
落書きの半分を濡れたティッシュで水拭きするときれいに落書きは消えます。除光液でなく水拭きです。油性マーカーは先ほどの沸騰水に対してもマスキングできるほどのものですがこのセラミック上では水拭きで消えてしまいます。  
黒染めした面にも油性マーカーで落書きします。
こちらも濡れたティッシュで水拭きするときれいになります。この透明セラミックコーティングは親水性が大きいために水となじんで油性の汚れがはがれやすくなる性質があるためです。

3.おわりに

最後までご覧いただきありがとうございました。もし、失敗した場合は、アルミ基板を、サンドペーパーで黒染めの黒が完全に消えるまで削ればやり直しができます。少々根気が必要ですが、あきらめる必要はありません。

透明セラミックコーティングはこちらで販売しております。受注生産になりますのでメールにてご連絡ください。写真をクリックしていただくと販売サイトに移動します。

Emmariniはこの技術で特許を取得して有償で開放しています。商用に利用される場合はご一報ください。