ステンレスフライパンの短所をセラミックコーティングの使い分けで解決できます。

当ブログEMMARINIでは、廃棄時の環境負荷の大きいフッ素樹脂を使わなくてもお手入れのしやすいフライパンの紹介をしています。この中でステンレスフライパンは、予熱さえ十分に行えば食材がくっつきにくくなり、食材投入後弱火にすれば焦げることもありません。また、フッ素樹脂ではできない強火調理(短時間高温処理で食感を良くする)もできて料理の幅を広げることができます。もちろんリサイクルもフッ素樹脂の比ではありません。

しかし、ステンレスフライパンには、油汚れが落ちにくく黄色くなってきたり、水垢がこびりついてきたない青みがかかったりするお手入れ上の短所があります。また、高温で予熱しすぎるとテンパーカラーと呼ばれる黄色化が起こります。他にも、傷がつきやすく、指紋がつくと目立つ問題もあります。このためステンレスフライパンを美しく保つのが面倒という課題がどうしても残ってしまいます。ここでセラミックコーティングでこのようなお手入れ性の問題が解決できないかと考えました。今回のブログでは、EMMARINIで使っている2種類の透明セラミックコーティング、シリカとジルコニア、をステンレスに処理した時のお手入れ性の特長の違いについて解説します。

ステンレスに透明のシリカ、ジルコニアコーティングした時の特長を表にまとめました。

項目シリカコーティングジルコニアコーティング未処理ステンレス
推奨コーティング厚さ(μ) 0.5~1.00.1~0.3
鉛筆硬度=傷のつきにくさ 9H2HB
テンパーカラー防止温度=高温での黄変性500℃350℃250℃
耐熱水温度(30日間連続浸漬して劣化しない最高温度)60℃100℃<100℃<
油汚れ(油性インク)を水ぶきで除去できるか?非常に良好わずかに残存悪い
焦げ付き汚れが、メラミンフォームで除去できるか?良好非常に良好悪い
炊飯で消火後むらさないですぐに蓋を開けた時のご飯粒のくっつきやすさ。くっつきやすいくっつきにくいくっつきやすい
ヘアライン仕上げの溝にはまりこんだ油焦げ汚れの除去性(ステンレス基板は取り除きにくい)良好非常に良好

表の結果より、ジルコニアコーティングはフライパン内側、シリカコーティングはフライパン外側に処理するとよいと考えられました。

シリカコーティングは、アルミフライパン基板上では耐熱水性に全く問題はないのですが、ステンレス基板上では長期間沸騰水に耐えることができないため、フライパン内側に使うことができません。しかし、フライパン外側ならば、沸騰水に長期間接触することはなく、しかも油汚れが落ちやいため、ここに使用できると考えられました。一方、ジルコニアコーティングは耐熱水性に優れているためフライパンの内側に用いることができ、焦げ付きが落ちやすいのも魅力的と考えられました。これを外側に使うと直火に当たる高温変色性に問題があると考えられました。

そこで外(シリカ)内(ジルコニア)半分コーティング処理のフライパンを試作してみました。

このフライパンを約1ヵ月実際の調理に使ってみました。手入れは洗剤を使わず、たわし、メラミンフォームによる水洗いとしました。

写真の底のまだら汚れは水垢です。濡れたまま放置すると水垢が析出します。コーティング面ではあまり目立ちませんが、非コーティング面では青っぽくなっています。また、側面と縁には点状に油が焦げてこびりついています。
メラミンフォームで手入れするとコーティング部分ではヘアラインの溝に入り込んだ汚れもきれいになります。子猫の彫刻部分もコーティングのおかげできれいになりました。親猫の部分はコーティングがないのできれいになりません。

アルミホイル(アルミ箔)を丸めたものでたわしのようにこすっても焦げ落としには効果的です。

追記:3ヵ月後の結果です。手入れはメラミンフォームの水洗いだけです。

ステンレスフライパン内側の左半分透明ジルコニアコーティング部分では、右半分の未処理部分と比べて汚れ具合が顕著に違います。3か月使用でさらに差がついてきました。
ステンレスフライパン外側の右半分シリカコーティング部分の汚れも明らかに少なくなっています。

ステンレス用セラミックコーティングの工業用途をお考えの方はこちらへどうぞ

お客様でご評価できる半分コーティング処理フライパンも用意しました。本文中と同じように内側はジルコニア、外側はシリカコーティングです。

百聞は一見にしかずです。ご自由にご評価してください。半分処理なのでコーティングの違いがはっきりします。ブログショップで展示販売しています。