ステンレスフライパンはSDGsにふさわしい道具です。

当ブログエマリーニでは、ステンレスフライパンの使いやすさを紹介してきました。強火でも」使えるため調理の幅が広がりますし、予熱をすればこびりつきがなくなり、油をひかずに目玉焼きだってくっつくことなく作ることができます。廃棄時に環境負荷の大きいフッ素樹脂コーティング品を使う必要はありません。ステンレスは実にリサイクルしやすい材料です。(過去のステンレスフライパンの記事はこちらです。)

ステンレスフライパン | Blog EMMARINI

ステンレスフライパンの欠点は油焦げがこびりつくこと。

しかし、ステンレスフライパンにも欠点があります。それは、使っているうちに油がこげてこびりついてくることです。フライパンの内側も外側も茶色になって、洗ってもきれいにならずやっかいです。研磨剤かやすりで時間をかけて削り落とすしかありません。昔はトリクロロエチレンのような強力な有機溶剤で溶かすことができたのですが、環境に悪すぎて今はもう使えません。毎日内外きれいに洗えばよいのでしょうが、それでも残った油分が長いうちにはこげてこびりついてきます。ブログEMMARINIはセラミックコーティングを得意としているので、この技術でステンレスの油焦げ問題を解決できないか検討してみました。

透明なジルコニアコーティングで、ステンレスフライパンの油焦げがつかなくなりました。

これが半分ジルコニアコーティング処理したステンレスフライパンの長期使用実験結果写真です。

中央左部分が未処理、右部分が透明ジルコニアコーティング処理をしています。フライパンの側面では未処理部分に油焦げがこびりついていますが、コーティング部分ではこびりつき量がはるかに少なくなっています。フライパン底面ではどちらもあまりこびりついていません。

透明ジルコニアコーティングが効果的な理由

1)透明でないジルコニアコーティングは熱衝撃に弱い

 フライパンのセラミックコーティングにジルコニアは良く使われており、白のほか顔料を混ぜて黒や赤などに着色したものが良く見られます。これらの場合、耐熱性は優れているのですが、コーティングの厚さが大きいために急熱急冷といった熱衝撃に弱いという欠点があります。ジルコニアは予熱すれば食材がくっつきにくくなるという優れた性質があるのですが、予熱したところに冷たい食材を入れるとコーティングにひびが入る恐れがあります。また、基材の金属との熱膨張差や熱伝導の違いにより剥離することもあります。ジルコニアコーティングを薄くすると熱衝撃性は改善されます。薄いコーティングでは自ずと透明になります。本来は薄くすることが目的で透明にすることは必ずしも必要でないところが実のところです。しかし、透明だと金属光沢が見えるので、デザイン的な価値がありました。EMMARINIでは、特別なゾルゲル法という技術を用いて、250℃程度の通常の500℃より低い温度でステンレスに透明なジルコニアコーティング処理ができるようになりました。

2)ステンレスに対してはジルコニアでないと沸騰水に耐えられない

セラミックコーティングにはジルコニア以外にシリカと呼ばれる代表的なコーティングがあります。このシリカコーティングは親水性が大きく、油汚れが大変落ちやすくなっています。アルミニウムフライパンにシリカコーティング処理すると、お手入れ簡単でくっつきにくいフライパンになり、おまけに黒染めで模様が描けることをこのブログEMMARINIでも紹介してきました。しかし、基材がステンレスとなるとシリカは非常に密着しにくくなる欠点があります。60℃のお湯ならば大丈夫ですが、これより高温、特に沸騰水に対しては長期間の使用ではがれてしまう問題があります。つまり、キッチン用のステンレスでは、シンクならば沸騰水に常時触れることはないので大丈夫ですが、フライパンには無理ということになります。しかし、ジルコニアコーティングになると、ステンレスに対して密着性が良いため沸騰水に長期間接触しても剥がれることはありません。(アルミニウム手作りフライパンの記事はこちらです。)

手作りフライパン | Blog EMMARINI

3)透明ジルコニアコーティングの弱点は研磨剤が使えない

しかし、残念ながら透明ジルコニアコーティングにも欠点はあります。研磨剤が使えません。スコッチブライトグリーンのような研磨剤入り不織布スポンジでも傷がついてしまいます。コーティングが薄いため、擦り切れるのが早くなるためです。メラミンフォームと研磨剤の入っていない不織布ならば使用可能です。アルミホイル(アルミ箔)を丸めたものでたわしのようにこすっても焦げ落としには効果的です。つまり、フッ素樹脂コーティングフライパンと同じような傷をつけないお手入れが必要です。