アルマイトをはがしてアルミを黒染めし,透明セラミックコーティングで保護します。アルマイトよりも耐熱性、耐擦傷性、洗浄性が良くなり、しかも描画が可能です。

1.はじめに

当ブログEMMARINIでは廃棄時の環境負荷が大きいフッ素樹脂に代替する透明なシリカ系セラミックコーティングを提案しています。フッ素樹脂コーティングに対抗できる環境にやさしい材料としてはアルミニウム表面に酸化アルミニウム層を設けたアルマイトが挙げられるのですが、どうしても耐熱性と洗浄性で劣っていました。湯沸かしや煮物には良いのですが、炒め物に使うと亀裂が発生し、しかも食材がこびりつきやすい問題がありました。また、アルミでない素材としては鉄とステンレスがあり、これは正しく使えばすばらしい炒め物ができるのですが、アルミよりも重いというキャンプ用としては甚だ厳しい問題がありました。フッ素樹脂は、焚火で強火高温加熱すると有毒ガスも発生してしまうので何かよい材料がないものかと考えていました。

EMMARINIは、この問題について鋭意取り組み、アルミニウム表面に薄く親水性のシリカ系セラミック層を設けて、アルマイトよりも耐熱性と洗浄性に優れた器具をつくることができました。これのコーティング処理は簡単で、装置としてはガスコンロかオーブンがあれば制作できます。そこで今回は、新品中古関係なくアルマイト処理されたアルミニウム製キャンプ用調理器具のアルマイト層をはがしてアルミニウム素地を露出させ、沸騰水道水で黒染め描画して、透明なシリカ系セラミック層で保護してみました。アルマイト加工品なら、豊富な種類の製品が入手できて、簡単にオリジナル模様を描いてリモデルすることができるので広い範囲の器具を作ることができます。キャンプ用品市場も落ち着いてきましたが、環境を考慮して自分だけの道具を作ってみるのもおもしろいかもしれません。

2.オリジナル模様のキャンプ調理器具を自作してみませんか?

それではオリジナルキャンプ用調理器具作品例を紹介します。

ケトル、メスティン、シェラカップ、スキレットです。スキレット以外は防錆のためアルマイト加工されていましたが、研磨や薬品で取り除いてから沸騰水道水で黒染めしました。柄はステンシル技法を使っています。仕上げはシリカ系セラミックコーティング覆って保護しています。

3.実用性確認のためシェラカップでこびりつきやすい炊飯とノンオイル目玉焼きに挑戦してみました。

シェラカップは火にかけることができるのが特長なのですが、これで炊飯するとごはんはこびりつくし、目玉焼きは焦げ付くという問題がありました。EMMARINIのセラミックコーティングではどうなるでしょうか?

お米を研いで30分水に浸します。
蓋をして強火にかけて沸騰したらごく弱火で10分間保持してから火を止め10分間自然冷却(蒸らし)します。
ごはんが炊けました。
スプーンでごはんを取り出します。シェラカップにはほとんどくっついていません。これはセラミックコーティングが親水性のためで、蒸らし中に薄い水膜がごはんとコーティングの間にできるためと考えています。ただし、残ったご飯粒が乾燥するとでんぷん糊が固まってくっついてしまいますので、すぐに水洗いするか、蓋をするなどして乾燥しないようにしてください。

次は目玉焼きです。

火にかけて予熱します。予熱温度は250℃で、温度計がない場合は少量の水を入れると水玉になって浮遊し、蒸発しないで動きまわるのが目安です。写真では”EMMARINI”の”M”の下に水玉があります。この浮遊現象はライデンフロスト効果と言います。この予熱が、こびりつかないための必須条件となります。つまり水が浮き上がるほどの力がこびりつきを防ぐことになります。
油を引かないで卵を割り入れてからごく弱火にします。蓋をしないと黄身がまっ黄色になっておいしそうです。写真のように白身が固まったら火を消します。シェラカップの底を濡れふきんに載せて冷却します。冷却すると、シェラカップと白身の収縮率の差と、先ほど説明した蒸らし効果によってはがれやすくなると考えられます。
お箸で目玉焼きの端の部分を剝がしてみました。焦げてはいますがシェラカップにはこびりついていなさそうです。
目玉焼きをお皿に移しました。この油分のない焦げた白身の食感がすばらしいです。カップのくっつきも濡れたスポンジで簡単にはがれます。

このように、アルマイトとは異なり透明セラミックコーティングは使いこなせばこびりつきにくくお手入れ簡単です。親水性なので油汚れも濡れたティッシュで簡単にふき取ることができます。環境負荷の大きいフッ素コーティングでは味わえない新しい食感も味わえますのでぜひお試しください。