セラミックコーティングで色が固定されます。料理に使用しても模様が消えることはありません。

鉄をバーナーであぶると美しく発色します。

鉄をバーナーであぶると、温度上昇とともに 銀→茶→紫→青→水色(後に黒)と色が変わっていきます。これは、四酸化三鉄(Fe3O4)別称:黒錆が層状に形成されて光の干渉(シャボン玉色)作用により着色されるとされています。特に紫→青が美しいのでそこで加熱をストップして、クリア塗装すれば色を保持することができます。そのままだと鉄なので錆びてしまいます(Fe2O3)別称:赤錆。その色のついた鉄を室温で使うにはクリア樹脂塗装で十分なのですが、フライパンのように高温と沸騰水に接触する用途では簡単ではありません。

フライパンによく使われるフッ素樹脂では耐熱温度が高々260℃程度ですので、より高温で使う鉄フライパンには向きませんし、廃棄時の環境負荷が大きく、SDGs的にあまりよくありません。鉄フライパンに良く使われるのはシリコーン樹脂(高温で加熱されるとセラミックの一種であるシリカに変化)ですが、これは、一時的な錆止めで、調理中に沸騰水に溶けてしまいます。溶けてしまうと模様も黒くなって消えてしまいます。

この美しい紫と青は鉄以外ではチタンに認められます。バイクのマフラーが紫や青になっているのは実にかっこいいのでファンの方も多いそうです。ステンレスではこのような美しい発色はせず、汚い黄色になってしまいます。チタンは錆びないので塗装する必要はありませんが、鉄ではそうはいきません。

鉄フライパンは錆び防止のために、シーズニングとよばれる油のコーティングをつける方法が取られるのですが、油焦げは黄色ですので、黒のバックなら良いのですが青や銀色のバックには向きません。そこでエマリーニではジルコニアと呼ばれるセラミックスを薄く無色透明に処理しました。このセラミックスだと、高温に強く、沸騰水に溶けることもありません。一般のセラミックスフライパンとの違いは透明なことで、急熱急冷に強くなっていることです。

作品を紹介します。

研磨したフライパンをバーナーで加熱して青く発色させて、マスキングとエッチングで鉄の銀色を露出させて模様を描きました。これらをセラミックコーティングで保護します。今回は写真については色補正をかけません。

模様は彫刻して鉄の地色の銀色を露出させました。これを透明なセラミックコーティングで保護します。露出した鉄の部分は調理によって変色したり腐食することはなく、銀色を保持できます。

次回は料理に使った様子をアップデートしたいと思います。