ロゴをクリックするとBASE内ショップに移動します。

前回の記事では、ゾルゲルコーティングでアルミ中華鍋に龍の絵を描きました。今回は、イタリアンに不可欠なアルミフライパンに絵を描きます。アルミフライパンは熱の伝わりが速いので、火加減が素早くでき、パスタソースを絡めるのや肉を素早く焼くのに最適です。しかし、汚れやすく、手入れも大変でしたのでプロ仕様といった感じでした。

今回は、アルミフライパンにステンシル技法とゾルゲル法を用いて自然発色で絵を描き、イタリア料理に挑戦してみました。

ステンシル転写法でパターン模様を描きます。イタリアといえば幾何学です。発色は水道水自然発色、ゾルゲルコーティングで保護します。

今回はステンシルシートのテンプレートを使って、彫刻せずに模様を描きました。つまり、ゾルゲルコーティングで保護されていないところを水道水沸騰により黒く発色させます。最後に全体をゾルゲルコーティングで覆います。この黒色化反応やゾルゲル法については過去の記事に記載しています。塗り方を反転させれば、白黒逆転もできます。写真のようになりました。。

ステンシルを反転させました。

娘にイタリアンを頼むとタン塩を作りました? 確かにイタリアではホルモン系をよく食べます。なるほど。

フライパンをあぶり高温モードで260~290℃に予熱して、油を引かずにタンスライスを焼きます。高温で短時間焼きます。油も使っていないので、べとつかずカリッとした食感が楽しめる新作イタリアンです。全くくっつかないで、焦げ目をつけることができました。

半分だけゾルゲルコーティングしたフライパンでくっつきにくさを比較しました。

 ゾルゲルコーティングフライパンで、食材のくっつきにくさとお手入れのしやすさを確かめようと思ったのですが、何か比較するものがないと分かりにくいものです。そこで、アルミフライパンの半分だけゾルゲルコーティングをして、残りの半分はアルミニウムのままにしました。このフライパンを用いて、くっつきにくさやお手入れのしやすさを比較しました。

ミートソース、(ラグー、ボロネーゼソース)を作りました。

ガスコンロを高温炒めモードにして自動的に弱火になるまでフライパンを予熱(260~290℃)します。油をひかずに、ひき肉を入れます。中火にして、さらに野菜(人参とにんにく他)を入れて炒めます。後はワインとトマトを加えて弱火で煮込みます。

写真のフライパンの上半分にゾルゲルコーティングをしています。左の料理前の写真でゾルゲルコーティングで少しアルミの色が濃く見えるのがわかります。中央はラグーソースを作って取り出したところです。コーティング面にはほとんどくっついていませんが、アルミまま部分では油をひかなかったので結構こびりつきました。右は、スポンジで洗剤なしで水洗いした後です。コーティング面はきれいになりましたが、アルミままでは油とトマト汚れが落ちませんでした。これよりゾルゲルコーティングのくっつき防止、汚れ落とし効果がはっきりしました。この後、アルミまま部分をきれいにするに、中性洗剤とスポンジでかなりこする必要がありました。

薄焼き卵も試してみました。

次は薄焼き卵を作ってみました。溶き卵を、油をひかないで260℃高温予熱した半分処理アルミフライパンに流し込み、すぐに火を消しました。そして、フライパンを濡れた布巾の上にのせて底を冷却して、剥がれやすくなるようにしました。上半分のゾルゲルコーティングしたところではするりと剥がれるのですが、アルミニウムまま部分ではくっついて破れてしまいました。

aluminum frying pan omelet
薄焼き卵を油なしで焼きました。ゾルゲルコーティング部では剥がれて折れ曲がっています。アルミままではくっついてしまいました。

色々な料理に使いながら長く使ってみたらもっと差がつきました。

ゾルゲルコーティングが長持ちするか気にかかるので色々な料理に繰り返し使ってみました。いつも高温予熱してから、油ひきなしで使うようにしました。また、手入れは、洗剤を使わずにスポンジで水洗いにしました。料理の内容や使い方は種々雑多ですが、およそ1か月後の結果を写真に示しました。

左側の写真は水洗いだけで手入れしてきた結果です。下半分のアルミニウムまま部分では、焦げも取りけきれず、汚れが蓄積しています。しかし、上半分のゾルゲルコーティングでは汚れがほとんど残りませんでした。ただ、傷があるのが見えますが、これは金属へらを使った時にできてしまったものです。ゾルゲルコーティングは無機物でフッ素樹脂よりも硬いのですが、金属(ステンレス)の端はもっと硬いので、これを使うのは以降やめにしました。シリコーンのへらなら大丈夫です。

右側の写真は、アルミニウムままの焦げ付きがひどいので、重曹水(5%添加)を沸騰させてみたところです。沸騰重曹水は楽に焦げ付きを取る方法で多くの方が紹介されています。アルミニウムままの焦げ付きも確かに取れたのですが、アルミニウム自体が腐食して完全に変色してしまいました。確かに、アルミフライパンの取り扱い説明書に重曹のようなアルカリを絶対に使わないようにと書かれています。

しかし、ゾルゲルコーティングした上半分では傷の部分以外は腐食は起こりませんでした。コーティングがしっかりとアルミニウム基材を保護していることがわかりました。このようにゾルゲルコーティングは手入れをしやすい上に、さらにアルカリ性の重曹も手入れに使えることがわかりました。ただし、重曹を沸騰させるのは危険なのと、傷の部分を激しく腐食するのでおやめください。室温ならば大丈夫です。

濃いレモンジュースとお酢の沸騰はさすがに無理でした。薄めれば大丈夫です。

アルカリの反対の酸については、酸味の非常に強い、レモンとお酢をそのまま沸騰させるとゾルゲルコーティングが剥がれてくることがわかりました。しかし、10倍に水で薄めると大丈夫でした。トマトとワインはそのまま煮込んでも全く大丈夫でした。詳しく調べると、レモンとお酢はpH2で強酸に近い数値です。トマトはpH4で弱酸です。レモンやお酢は10倍以上に薄まればpH3以上になりますので大丈夫でした。つまり、顔をしかめるほどの酸っぱいものを煮詰めるのは避けた方が良いことがわかりました。梅干しや掃除用クエン酸もpH2ですから、これだけを煮詰めて汚れ落としは危険です。薄めたり、室温ならば大丈夫です。

次回は安全性について紹介します。

参考文献