本物の金でなくても、金色の食器にはどこかデラックスでなつかしい魅力があります。その金色を、自作で簡単に実現できるとしたらどうでしょう。今回は、アルミを“沸騰した水道水だけ”で金色に染める方法をご紹介します。ぜひ挑戦してみてください。

当ブログEMMARINIでは、環境にやさしいものづくりを大切にしています。
廃棄時に負荷の大きいフッ素樹脂を使わずに済むよう、独自に開発した透明セラミックコーティングをご紹介しています。この技術はすでに特許を取得し、公開しています。

これまでの記事では、アルミが沸騰水道水に触れると黒く変色する性質(アルミ鍋が黒ずむのと同じ原理)を利用し、黒染めしたアルミを透明セラミックで保護する方法をご紹介してきました。 今回はその応用編として、ほぼ同じプロセスでアルミを金色に染める方法を解説します。

1.なぜ、アルミが沸騰水道水で金色に染まるのか?

アルミが沸騰水道水で黒くなるのは、水道水中のカルシウムや鉄分がアルミ表面に1μ程度のごく薄い層を形成するためです。ただし、そんな薄い層がなぜ黒く見えるのかはまだ科学的に完全には解明されていません。 一方で、この黒変は 無毒であることがWHOでも確認されており、黒くなったアルミ鍋を使い続けても問題ありません。実はこの変化の途中で、アルミは 銀(初期)→金→黒 と色を変えていきます。 ただし金色である時間は非常に短いため、日常の調理では金色の鍋を見ることはほとんどありません。

アルミ板を切り抜き、ハンマーで叩いて鳥の形のお皿に成形しました。最初はもちろん銀色です。
アルミの板を沸騰水道水に10分浸漬した状態です。見事に金色になりました。
30分浸すと黒くなりました。水道水の成分によって変化の速度は異なりますが、金色の時間はとても短い印象です。 色の変化を観察しながら、ベストなタイミングで取り出すのがポイントです。

2.金も黒もこのままでは弱いので透明セラミックコーティングで保護します。

EMMARINIオリジナルの透明セラミックコーティング液です。土鍋と同じシリカ系で食器としての安全性基準はクリアしています。コーティング液を容器のスポンジヘッドで塗布して、ガスコンロで250℃程度に加熱して焼き付けます。薄く、強く、透明で金色を保持することができます。ブログショップで販売中です。

3.今回の作品紹介。

金と黒のカラスが金と黒のぐい飲みで神酒をいただいている作品です。
3本足の八咫烏もデザインできます。油性インクでマスキングすると、金銀黒を使い分けることができます。
八咫烏の絵文字で書かれた那智大社の「那智結瀧宝」を添えて日本代表の健闘を祈願しました。八咫烏は那智の瀧で神武天皇をご案内したとされています。証には「日本第一(Japan First)」と書かれています。
自作の金と黒の酒器で勝利の祝杯をあげたいものです。

4.金色アルミは実は”昭和レトロ”の定番

金色のアルミ食器は工業的には一般的で、代表例はシュウ酸アルマイトの金色鍋ややかんです。 昭和育ちの筆者には「貧乏鍋」という不名誉な呼び名の記憶もありますが、最近は“昭和レトロ”として人気が再燃しています。居酒屋で金色のタンブラーが出てくると、あの冷たさと懐かしさ、そしてちょっとした豪華さに、つい嬉しくなってしまいます。

5. しかし、金色アルミをDIYで作るのはとても難しい

金色にするためのアルマイト加工や金メッキ、蒸着などは専門設備と知識が必要で、薬品も危険かつ廃棄も大変で、完全にプロの領域です。一般人にはハードルが高すぎます。

そこで、EMMARINIの透明セラミックコーティングの特長をまとめます。プロのお仕事にはかないませんが、メリットもあります。

1)処理に専門的な知識や特別な装置が不要で、DIYとして実施可能

2)シリカ系セラミックスでアルマイトより親水性が高く食器に使った場合汚れが落ちやすい。

3)コーティングが1μ以下の極薄で、薄いがゆえに耐熱衝撃性が高く、曲げることもできる。

・アルマイトは10μ以上必要

・オーブン食器や炒め用フライパンにも適用可能

 

4)シリカ系のためアルミナ系のアルマイトよりも耐酸耐アルカリ性が高い。食洗器も対応(食洗器用中性洗剤推奨)

5)金、銀、黒については染料顔料を使わない自然発色のため、食品と接触しても安全上の問題がない。

余談)金色に黒が混じることで、まるで燻したような渋い風合いになる。昭和レトロどころか、平安時代の工芸品のような趣さえ感じられます。これは個人の好みです。

おわりに 

金色に染まる一瞬の輝きは、アルミという身近な素材の中に潜んでいた小さな奇跡のようです。 その変化を自分の手で引き出し、作品として形にする時間は、とても豊かで贅沢なひとときでした。もしご興味があれば、ぜひあなたも金色アルミの世界を楽しんでみてください。 身近な素材から生まれる新しい表情が、きっと創作の喜びを広げてくれるはずです。