こんにちは、フライパンブログ、エマリーニ管理人のCheilgiroです。誤解だらけのセラミックコーティングフライパンについてセラミックス専門家の立場から記事を不定期に連載しています。セラミックコーティングフライパンの取扱説明書によく「セラミックスは耐熱性に優れています。強火で使用しないでください。」旨の、わけのわからない説明を見かけます。耐熱性に優れているなら強火もOKと思うのがあたりまえでしょう。これでは残念無念ですし、取説をちゃんと読んでいないとフライパンをダメにしてしまう可能性もあります。今回は、これの誤解を解いていきたいと思います。

セラミックスは耐熱性に優れているのは本当。しかし、耐熱衝撃性に弱いので強火では使えない。

「耐熱衝撃性」という聞きなれない言葉が出てきましたが、これは急熱急冷に対する抵抗性を示します。セラミックスの大体はこれに弱い。例えば、土鍋を熱しておいて急に水を入れたり、ガラスのコップに熱いお湯を入れると割れる危険性があります。これは耐熱性(溶けたり、分解したりしない)とは別の問題で、急激な温度変化(ヒートショック)で割れるかどうかが問題になります。言葉が似ているので、いつも勘違いされます。フライパンの場合、急熱急冷はしょっちゅうですので「セラミックコーティングは耐熱性には優れていますが、耐熱衝撃性はあまりよくありません。したがって中火以下で急熱急冷は避けてご使用ください。」と書いておけば、意味不明にならずに済むとおもうのですが。

耐熱衝撃性の本質は熱膨張収縮です。

セラミックスに限らず、ほとんどの物質は熱くなると伸び、冷やされると縮みます。これを熱膨張収縮といいます。セラミックスのほとんどは熱を伝えにくいため、熱くなったところは伸び、まだ熱くなっていないところでは伸びません。そうなると伸び縮みに差ができてそこに大きな引っ張る力がかかります。セラミックスは硬くてもろくいためそのような力がかかると割れてしまいます。金属や樹脂では力がかかっても材料自身が一緒に伸び縮するので割れることはありませんが、セラミックスではそうは行きません。

さらに悪いことには、セラミックコーティングフライパンはだいたいはアルミニウム合金にコーティングされているため、この合金との熱膨張収縮差も大問題になります。アルミニウム合金はセラミックスよりもさらに熱膨張は大きく、熱を伝えやすい性質があります。セラミックコーティングはこれに張り付けてあるのですが、急熱急冷すると膨張収縮の差による接着面への引っ張る力はさらに大きくなるため、コーティングが剥がれてしまう可能性が非常に大きくなります。

セラミックコーティングフライパンは本質的に炒め物には向いていません。じっくり時間をかける調理に適しています。

ここのようにセラミックコーティングフライパンには熱膨張収縮の差があるため、高温短時間勝負、強火が必要な炒め物料理には適していません。煮物のような低温でじっくり加熱する調理に適していると思います。前回の投稿で、セラミックコーティングフライパンは予熱すればくっつかないと説明しましたが、予熱を強火で急激に行うのはやめたほうが良いと思います。急熱急冷してよいのは、鉄、ステンレス、アルミのような金属製です。

エマリーニの手作りアルミフライパンはセラミックコーティングしてありますが急熱急冷に強いです。

筆者は、エマリーニというブランドでアルミフライパンの調理面にアルミの黒色化反応で描画してそれを透明なセラミックコーティングで保護したフライパンを作成しています。このフライパンは強火でも使えます。この理由は、セラミックコーティングが、一般的なセラミックコーティングよりもはるかに薄いためです。薄いため温度差が生じにくく熱膨張収縮差が小さくなります。このような薄いコーティングにしたのは、下絵が見えるように透明にする必要があるためで、ゾルゲル法という薄いセラミックコーティングを作る技術を使いました。結果的に急熱急冷に強く、予熱すればくっつきにくくなりました。炒め物がうまくできます。

ところが、薄いゆえの弱点も正直あります。それは、耐摩耗性が弱くなることです。薄いゆえに擦り切れるのが一般の色付きのセラミックコーティングよりも早くなります。このため、スチールウール、研磨剤、金属へらの使用をお控えいただくようお願いしています。メラミンフォームやフッ素樹脂用の道具を使うようお願いしています。

よろしければ、エマリーニのショップを覗いてみてください。

次回はセラミックコーティングフライパンについて、「これはないやろ」について書きたいと思います。